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●山口先生の「法の世界からみた『会計監査』」を読んで。


●さてさて、
言わずと知れた「ビジネス法務の部屋」管理人の山口利昭先生、
新たなご著書を出されたのは周知のとおり。

 遅ればせながら、
GWに一読させていただきましたので、
本日のツボでは、
ネタバレにならない範囲で、
簡単な感想めいたモノというか、
読んで考えさせられた点というか、
そこらへんを少しばかり。


●この本を手に取り、
その目次を一覧したとき、
一番最初にビビっと来たのが、
第5章と第8章でした。
 その章名もステキです。

 「5章 会計士から嫌われる『第三者委員会』と『金商法193条の3』」
 「8章 会計士と監査役の連携に関する本気度」

 著者の方に申し訳ないという気持ちはあるものの、
齢を重ねるにつれ、ある面では短気になってしまった私は、
とにかく気になった章から読み始めるというのが、
本を読むときのセオリー。

 このセオリーに従って読み出すと、
やはりドンピシャ(古い?)ですね、山口先生、
目当ての内容を丁寧に書いてくれています。

 会計監査において不正を発見した場合には、
まずは監査役に対して報告しましょうね、と、
かの有名な金商法193条の3ですね、
この条文に代表されるような、
会計士と監査役の連携が何故うまく機能しないのか?

 特に、
この金商法193条の3というのは、
誤解を恐れずに言えば、
会計士が監査役に対して、
ある意味「責任転嫁」できちゃう、と、
そういう「逃げ道」的な位置づけのようにも思えるのに、
それを何で敢えて活用しないのだろうか?、と。

 詳細は、
正確な理解を培うためにも、
この本の具体的記述を丁寧に追うべきですが、
一つの重要なファクターとして、

 会計士の監査役に対する不信感

これを挙げられている。

 これを読んだとき、
私の正直な感想というのは、

 「あぁ、やっぱりそうなのかなぁ…」、と。

 もちろん、
マジメにやっておられる監査役は、
それこそ沢山おられますよ。
 だけど、
先日の「紗栄子パラドックス」の話じゃないけど、
実際にどうなのか?という話と、
外から見た印象はどうなのか?という話、
この2つの話しってのは必ずしも整合するわけではないので、
このような不信感の存在を真正面から否定するのも、
それまた難しいのかもしれない、と。


●でさ、
その次に読んだのが第9章。
 その名も、

 「9章 なぜ企業は粉飾に手を染めるのか?」

 これもまた面白いのですが、
その中で私が改めてビビっときたのは、
従業員から見た内部通報制度というものを、

 「不正から逃れるための手段」(200頁)

こう明確に位置づけられている点です。

 言わずもがなかも知れんが、
少なからず崩れてはいるものの、
未だ完全に消え去ってはいない長期雇用システム。
 このシステムの下では、
従業員、特に正社員というのは、
「逃げ場が無い」のよね。

 事実上、
不正に加担するか、それとも、
断って辞めざるを得なくなるのか、
こういう短絡的なジレンマに陥りやすいし、
後者の選択肢では、
直接的な不利益が即座に降りかかってくる、
要は前者の選択肢に比べてリスクの現実感がより高い、と。

 この悩ましいジレンマを、
少しでも解消するためにこそあるのが、
まさに内部通報制度なわけですよね。
 未だにコンプラ系のお話では、
「加担しない勇気を持て!」とか、
「研修で意識を高めろ!」とか、
「加担した場合のリスクを知らしめろ!」とか、
そりゃぁ、これらも大事なんだけどさ、
そんなんだけじゃ何時まで経っても解決するわきゃないし、
上記ジレンマを直視しなけりゃ説得力も出てこない。

 もちろん、
実務を回してるとさ、
年間1件来るか来ないかとか、
来たとしても「パワハラ」という名目での上司の悪口ばっかりとか、
実務担当者からすると、

 「この制度に一体、何の意味があるんだ?」、と、

そうグチりたくなるのも十分わかる。

 だけど、
この内部通報制度こそが、
上記ジレンマに陥りやすい従業員に対して、
「第三の道」、いわば「逃げ道」を(不十分ながらも)確保してあげる、
まさに最終安全弁なんだ、と。
 そういう認識を、
頭の片隅(の更に片隅)にでも置いておくのとそうでないのとでは、
やはり大きな違いがあるのではないかと。

 ちなみに、
内部昇進組が多い日本の役員構成にあっては、
それこそ役員にとってだって、
こういう「逃げ道」の確保は重要だよね。


●でさ、
こういう「逃げ道」の確保という認識から考えを進めていけば、
法律事務所などの社外窓口への匿名通報ルート、
これはやはり最低限確保すべきということになって来やすい。

 もちろん、

 「中立性を重視すれば実効性が削がれるのではないか?」、と、

これは内部通報制度の構築にあたって、
常にある悩みだよね。

 だけど、
最初の窓口部分はしっかりと中立性を維持して広く情報収集した上で、
その情報を通報者の信頼を裏切らない形に加工しつつ、
会社法上の責任を負担している役員へと渡していく。
 要は、
会社法上の責任を負担している以上、
これらの役員が(有事)対応せざるを得なくする、
これで何とか実効性を図ろう、と。
 まぁ、
抽象的に言うのは簡単でして(苦)、
匿名通報の扱いとか実際上かなり難しいわけですが、
こういう中立性と実効性のバランスを、
知恵を出しながら適宜図っていくしかないわけね。
 実務に「魔法の杖」なんて無い。

 で、
その実効性の要になるのが、
情報を受け取る役員なわけで、
理想的に言えば社外役員に越したことないわけですが、
そこでの「役員」、特に「社外役員」にも、
理論上は二種類いるわけですな。
 何って、
「取締役」と「監査役」。
 実務上は、
特に「社外役員」と言えば、
社外監査役であることは周知のとおり。

 で、
前置き長かったけど(笑)、
まさにここでさ、
私なんかは、
さっきの第5章と第8章の議論に、
頭が飛んじゃうわけなんですわ。

 何かと言うと、
それが事実として本当に当たっているのかという議論はともかく、
 
 「監査役に対する不信感」

 会社法上の位置づけはともかく、実務での意識としては、
監査役というのは取締役よりも下に位置づけられてる、
そういう感も直ちには否めない。
 その中で、
(社外)監査役に対して、
果たしてどこまで実効性を期待してもらえるのだろうか?、と。
 特に自らの従業員生命を賭しなければならないような場面において、
そこまでの信頼感を果たして従業員から勝ち得ているのだろうか?、と。

 そんなことあたりを、
ザックリと妄想しちゃう自分がいました。


●この手の議論って、
余り言い過ぎると怒られるので、
本日のツボはここまで。

 ちょっとね、
途中から飛んじゃってるけど(笑)、
上記の内容で取り上げた点以外にも、
まさに本の副題にもあるとおり、
「弁護士と会計士のわかりあえないミゾ」、
これが分かりやすい形で丁寧に書き込まれてましたよ。
 ここはまさにネタバレになるので、
読んでのお楽しみということで。

 有意義なGWの半日をありがとう、
そんな本でしたので是非お手に取ってみては?


(2013年5月7日記)
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