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●効果的な知財保護を図る「絶妙ブレンド」の素の1つ、「営業秘密」のお話です。


●皆さんは、「知財」と言えば、真っ先に何を思い浮かべますかね?

 おそらく殆どの方は、特許、これを思い浮かべるのではないでしょうか。

 確かに、「プロ・パテントの時代だ」と言われてから、
もうかなり久しくなりましたね。

 でも、ある企業が有する知的財産の根幹的な部分を、
特許だけで守りきれるのか、また、それが適切なのかと問われれば、
必ずしもそうではないだろうと言われてるんですね。

 よく問題になるのが、方法の特許。
 その内容を第三者が実際に利用しているということ、
これを訴訟の場で立証するのはかなり困難を極める作業なんですね。
 ですから、仮に方法の特許を取得したとしても、
それに基づく権利行使はなかなか難しく、結局はノウハウを外部に公開しただけ、と。
 そういうことにもなりかねないのです。

 なので、必ずしも特許だけに頼るのではなく、
営業秘密との間での上手な役割分担が必要でしょう、と。
 言い換えれば、今、ここに重要な知的財産があるとして、
その理想的な保護のあり方は、特許と営業秘密との「絶妙ブレンド」であるべきだ、と。
 そう言われてるんですね。


●さて、そのように重要な位置づけを有する営業秘密ではありますが、
企業が「この情報は営業秘密だ」と言えば、どんなものでも営業秘密なのか、というと、
そうではないんですね。

 「営業秘密」、これは法律上の用語でして、
不正競争防止法という法律の中で定義されており、
法的な保護にふさわしいものだけに限定されているわけです。

 既にご存知の方も多いかと思いますが、
秘密管理性、有用性、非公知性という、いわゆる3要件ですね、
これはザックリと言うと、
企業が適切に管理している情報であって、
事業上の観点から有益なものであり、一般には知られていない情報、
このような情報だけが「営業秘密」として保護されるわけです。


●で、その3要件のうち、訴訟で一番問題になるのはどれなのか。

 これは、ダントツの3馬身差ぐらいで(笑)、秘密管理性、この要件です。

 現に、営業秘密の侵害の有無が問題となった訴訟において、
営業秘密の侵害があると主張する原告が負けてしまう理由の多くは、
秘密管理性が満たされていないと、要はちゃんと管理されていないですよね、と、
そういう点にあるのですね。


●では、どうして、そんなに秘密管理性の要件が問題になるのでしょうか。

 これには色々な説明の仕方があるのでしょうが、結局のところ、
 
 「管理が邪魔くさいから。」

 この一言に尽きているのではないかと思います。

 この秘密管理性という要件は、実務上は、ザックリというと、
①その情報に対するアクセスが適切に制限されているか?
②その情報が営業秘密であることについて認識できる状態にあるのか?
この2つで判断されていると言われています。

 しかしながら、営業秘密というは、
それが製造マニュアルのような技術情報であるにせよ、
または顧客名簿のような営業情報であるにせよ、
日々の業務の中で、現場の人達がよく使うものが多いんですね。

 そうであるにもかかわらず、
例えば、上記①のアクセス制限の要件を満たすために、
その情報を記載した書類なりファイルは厳重に管理してないといけない、
保管するキャビネットのカギは極々一部の従業員だけが持ってなさい、と。
 仮にそういう厳重な管理を行うとすると、
そのカギを持っている人が、みんな出張だかとお休みだとか、
深夜の突発的な対応を迫られたときに、そのカギを持っている人は帰宅したとか、
そういう場合はどうするんだよ、と。

 また、上記②の認識可能性の要件についても、
例えば、現場でその情報をやり取りするときに、
いちいちマル秘のハンコを押さないといけないんですか?、と。

 「そんなんじゃぁ、現場は回らないよ!」

 そういう声が、必ずと言っていいほど現場の人たちから上がってくるんですね。

 そして、いつの間にか、管理がおざなりになっていく・・・。

 経産省が示した営業秘密管理指針の内容など、どこへやら、という状況です。

 で、その後、実際に問題が起こった時には、裁判所から、
適切な管理がされていないので、秘密管理性の要件が満たされていないですねぇ、と。

 まぁ、そのような「黄金サイクル」(笑)が実務の現場ではよく見られますね。


●で、前置きが長くなっちゃいましたが、本日のツボはですね、
確かに秘密管理がおざなりになっていた場合には負ける確率が高くなるのですが、
でも、簡単にはあきらめちゃいけない場合があるんですよ、というお話です。

 それは一言でいえば、
純粋に「社外」の人との関係で、営業秘密の侵害が問題になった場合です。
 ここで「純粋に」と言ったのは、「元社内」の人は含まないという趣旨です。

 例えば、営業秘密と主張する製造マニュアルや顧客名簿について、
社内では誰でもそれを見れました、机の上に普通にのっかってましたよ、と、
で、これでは上記①のアクセス制限の要件が満たされてないんじゃないの?、と。

 また、マニュアルや名簿には、マル秘の印が押しておりませんでしたよ、と、
で、これでは上記②の認識可能性の要件が満たされてないんじゃないの?、と。
 
 でも、ちょっと待ってください。
 すぐにあきらめる前に、今、問題になっているのは、

 「社内(元社内)の人ですか、社外の人ですか?」

 そう問うて欲しいのです。


●例えば、下請け契約がめでたく締結されたことに基づいて、
下請けを委託する人(A)から下請けを受託する人(B)に対して、
製造マニュアルが提供されました。
 その提供の際には秘密保持契約が別途締結されました、
または、下請け契約の中には、製造マニュアルを含めた形で、
Bさんの秘密保持義務が定められています、と。

 で、当初は特に問題もなかったのですが、
ある時、AさんとBさんとでイザコザがあって、
残念ながら下請け契約の解消という事態に至りました、と。
 これに伴いBさんから製造マニュアルは返却されましたが、
下請け契約解消後も、Bさんは、未だにその製造マニュアルの内容に基づいて、
製造を行い、どうも第三者に卸しているらしい、と。

 この場面で、Aさんが、Bさんに対して、
製造マニュアルはAさんの営業秘密だから、その製造を止めろ、と、
そう主張したとしましょう。
 それに対して、Bさんが、例えば、
Aさんが営業秘密と主張する製造マニュアルについて、
Aさんの社内では誰でもそれを見れたんでしょ?、
マニュアルにはマル秘の印が押しておりませんよ、と、
そう反論してきたらどうですか?


●その反論、ちょっとおかしいなぁ、と、
そう思いませんか?

 確かにAさんの社内の従業員との関係では、
上記①のアクセス制限の要件が満たされていないのかもしれません。

 でも、社外のBさんとの関係では、
AさんはBさんから秘密保持義務を取った上で初めて
その情報を開示してるんですね。
 その情報を外部に一般に公開しているわけでもない。
 だから、Aさんの社内の従業員との関係はともかくとして、
少なくとも社外のBさんとの関係ではですね、
上記①のアクセス制限の要件は満たされていると言える余地が十分にあるはずです。

 また、Bさんは、Aさんとの関係で、秘密保持義務を負った上で初めて、
その情報を開示されたわけなんですね。
 で、その情報が外部に一般に公開されているわけでもないとすれば、
たとえ、その製造マニュアルにマル秘の印が押されていないとしても、
上記②の認識可能性の要件も満たされていると言える余地も、
かなりあるのではないでしょうか。


●ただし、上記②の認識可能性の要件については、
上記①のアクセス制限の要件と違って、
たとえ社外の人との関係が問題になっているとしても、
判断の厳しさが緩和されるわけではないんじゃないか、という考え方もあります。

 ここはかなり議論が分かれるところですが、
私個人としては、少なくとも社外の人との関係では、
上記①のアクセス制限がかなり強く認められると思いますので、
そうであれば、それとの関係で、上記②の認識可能性は、
もともと相当程度存在すると言ってよいんじゃないか、と。
 だから、秘密保持義務を負って初めて提供されたことが明確な状況なら、
上記②の認識可能性の要件は満たされていると言える余地はかなりあるのではないか、と、
そう考えています。

 というのも、そもそも、営業秘密と認められるために、
なぜ秘密管理性の要件が要求されているのかというと、
それは、営業秘密の対象となる情報には登記のような権利を公示する方法がない、と、
それにもかかわらず、ある人が、ある情報を利用しようとしたときに、
突然、第三者から「それ、私の営業秘密です。製造を中止してください」と言われたら、

 「えぇ?」、と、

そう言いたくなりますよね。

 なので、秘密管理という形で、登記の代わりとしている、と。

 で、そうなのであれば、
先ほどのように、社外の人がですね、
秘密保持義務を負って初めて、その情報を提供されていることが明確な状況にあるのなら、
権利の公示、これはもう十分にあるんじゃないですかね、と。

 だから、後は非公知性など他の要件のチェックに重点を移していいのではないか、
そういう風に思うのです。


●本日のツボはこれでおしまい。
 後はファイナンスのツボで、ひととおり一周ですね。


(2008年1月17日記)
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