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●「敢えて空気を読まずに『社外取締役の選任が相当でない理由』を書く」の巻。


●えぇっと、
まぁ、余り多言は要しないかと思いますが、
オモテ・ウラの両方・各所で、色々と盛り上がってますよねぇ。

 「『社外取締役を置くことが相当でない理由』をどう書くんだ?」、と。

 正直なところ、
この改正要綱の内容を見たときには、
こんなのヒナ形に沿って適当に書かれるんであって、
真剣に議論しても仕方ないだろうと思っていたのですが、
これまでの予想外の盛り上がりブリを見て、
実務担当者の方々の真面目さに敬服いたしました。

 というわけで、本日は、
全く空気を読まずに、ツッコミが多数入ることを覚悟の上で、
このテーマをダーク・サイド(?)から書いてみようかと。


●このお話、
まず対象はですね、
公開・大会社で、かつ、有報提出会社。
 一応、
社債公募をトリガーとして有報提出会社になってる会社は対象外。

 さて、
ではウチは対象になってるよ、と、
でも社外取締役は選任しないよ、と。
 そういうことであれば、
実際に「相当でない理由」をどう書いていくのか?、
ここを真剣に考えていかないといけないわけね。


●まず前提として確認しておきたいのはリスクの点。

 会社法上、
この「相当でない理由」について、
全く記載してなかったとか、記載が虚偽だったとか、
そういう場合は100万円以下の過料ですね、
これがかかってくることになるわけ。
 ただ、
この過料ってさ、
色んなトコで聞いたことあると思うけど、
多分、過去に実例は無いはずよね。
 そのぐらいリスクは非常に低いわけね。

 それからもう一つ、
記載が不適切だったとか、そういうことで、
何か決議取消しのリスクはあるのか?と。

 これは、
結論としては、
そんなリスクは無いと、
そう思っていただいてよい。

 そもそも、
事業報告というのは決議事項ではない。これは報告事項。
 なので、
報告それ自体が取り消しとかは当然あり得ない。

 あるとしたら、
事業報告における不適切な記載を原因として、
取締役選任の決議取消しにつながるかどうか?、
そういうお話。

 ただ、
現に取締役に選任された人の説明が重大な点で間違っている、とか、
そういう話には、ちょっとつながりくにいわけよ。
 そうである以上、
取締役選任の決議取消しなんてことも、通常はあり得ないと、
そう思っていただいてOKでしょう。

 というわけで、
法的なリスクだけで言えば、
この事業報告の記載というのは、
正直、全然たいしたこと無い。


●残るのは事実上の話。

 国内外の投資家との関係を見据えて、
どこまで書けるのか?書くべきなのか?、
そういうお話なわけね。

 もちろん、
できるだけ投資家の納得を得られるように書く、と、
それに越したことはないわけ。
 その意味で、
法的リスクがたいしたことないとはいっても、
真面目に対応する必要はある。

 ただ、
結局のところ、
特に海外の機関投資家というのは、
どんな説明をしたところで、
社外取締役がいないということに納得なんて、
そんなのしてくれるわけがないんじゃないかな、と。

 そういう意味では、
このお話というのは、
どうやったって100点が取れる話ではない。
 ココ、大事ね。

 この事業報告の記載というのは、
一応、真面目になる必要はある。
 だけど
深刻になる必要まではない、と。
 事実上の話であり、かつ、
100点はどうやったって取れないんだから。
 そういう意味で、
そもそも100点を狙っちゃダメなんですねぇ。


●まぁ、
抽象的にグダグダ説明しても仕方ないので、
一応、以下のとおり、たたき台としての記載例を作ってみたよ、と。
 もちろん100点を狙っていないという前提で読んでよね(笑)。

 * * *

①当社は、重要な経営判断を伴う業務執行については、取締役会や常務会にて、その真摯な議論を通じて審議し決定することが適切であると判断しております。

②かかる経営体制の下では、各取締役が当社における現場の実態に精通しているか、またはそれに代替する程度の深い業界知識・経験を有しているのでなければ、刻々と移り変わる事業環境に対応した、迅速かつ的確な意思決定は実現しえないものと考えております。

③このような条件を満たす適切な社外取締役候補者を、当社は未だ見出すことができておりません。

④また、社外取締役がいない現時点においても、以下のとおり、監査役会など他の機関・制度によって、社外取締役に対し一般に期待される経営全般や利益相反の監督機能は実現されております。すなわち、~~。とりわけ、当社の監査役会は、~~等の多様な分野出身の社外監査役■名と、当社における様々な業務経験を有する常勤監査役■名によって構成されており、社外監査役を含めた各監査役は、取締役会における議決権までは有さないとしても、これに出席した上、必要に応じて積極的に意見を表明することで、各取締役による適切な議決権行使を促すことに努めております。

⑤このような既存の機関・制度に加えて単に形式的にのみ社外取締役を選任することは、屋上屋を重ねるに等しく、コストの観点からも適切でないものと考えております。

 * * *

 さて、
面倒ではあるけど、
この記載例について、
少し説明していきましょうかね。


●まずは、何はともあれ、
「社外取締役の選任はむしろマイナス」と、
その問いに答えるという姿勢が大事ですね。
 100点を狙わないにしても、
やはり記載が欠けているとか言われないためにも、
最低限必要でしょうねぇ。

 では、
その「選任はむしろマイナス」と言った場合の、
「マイナス」の肝は何か?というと、
これはやはり、経営のスピードやコスト、これらに対する悪影響と、
そういう説明が実務の感覚にもフィットしてくるんじゃないかなぁ、と。

 今回の記載例では、
スピードの点でマイナスがあるということを①~③で、
コストの点でマイナスがあるということを④⑤で、
それぞれ書いてるわけですね。


●まず前半の①~③。

 ①では、
特に取締役会が、重要な経営判断を伴う業務執行を自ら決定している、
そういう経営体制が適切なんだ、と、
そういう説明をしています。

 その上で②では、
そういう経営体制の下では、
各取締役が、
現場の実態に精通しているか、または、
それに代替する程度の深い業界知識・経験を有していなければ、
適切な経営スピードを維持し得ない、と、
そういう説明をしてるわけ。

 んでもって、③、
そのような条件を満たす適切な社外取締役候補者を、
未だ見出すことが出来ておりませんよ、と、
そういう説明をしてるわけね。

 ここまでのところ、
いわゆる適任者がいない、と、
従前からのCG報告書でなされていた説明の延長線上にあるわけですが、
それぞれのトコロで一応ポイントが無いではない。


●まず①ですが、
ここに書いてあるのは、
取締役会が業務執行の「監督」に純化していない、
いわゆるモニタリング・モデルではないんだ、
それが適切なんだということを言っているわけ。

 ここの部分、
ホントは議論がないわけではないんですね。
 例えば、
委員会設置会社だとか、監査・監督委員会設置会社とか、
そういうものになれば取締役会の必要的決議事項を大きく減らせるわけで、
取締役会は重要な業務執行について自ら意思決定をする必要は無くなるわけ。

 ホントは、
理屈を詰めていけば、
そのようなモニタリング・モデルとの比較、どっちがより適切なのか、と、
そういう議論をしないといけない。
 だけど、
ここではそこまで踏み込んで書いてない。
 で、
それでも十分じゃないのかな。
 
 なぜか?
 それは、
相場観から逸脱していないから。
 日本の取締役会の殆どは、
モニタリング・モデルじゃありませんよね。
 重要な業務執行について自ら意思決定されています。
 実は委員会設置会社であったとしても、
モニタリング・モデルに純化しているというところは、
半数にも満たない状況だよね。
 たとえそれがセレモニー的なものであったとしても。

 なので、
100点を狙わないという方針の下では、
ここの部分について、
敢えてモニタリング・モデルを採用しない理由、
そこまで踏み込んで書く必要は無いんじゃないかな、と。


●次、②です。
 ここは、
マイナスにつながる理由ですね。
 キレイな言葉で書いてるけど、
そのキモは「外様に納得してもらうための時間がムダ」ということかしら…。

 ここで一点、
注意が必要なのは、
業界知識・経験を問題としている点。
 従前のCG報告での説明では、
単に当社固有の現場の実態に精通してなきゃダメだから、と、
そういう説明をしていたかと。
 トヨタさんやキャノンさんの説明もこれですね。

 でも、
社外の人ってのは社外なんですから、
通常、当社固有の現場の実態に精通してるわきゃない。
 なので、
当社固有の現場の実態に精通してなきゃダメ、と、
そういう説明だけだと、
社外で探すことなんてそもそもムリじゃないの?、と、
引いて言えば、社外を探す努力を全くしてないんじゃないか?、と、
そう言われかねない。

 上場会社であれば、
あくまで努力を行うことが前提になってくる予定ですよね。
 なので、
一応、選任努力義務とは矛盾がないように注意した方がいいかと。

 そうすると、
現場の知識に代替する程度の深い業界知識・経験を有していなきゃ、と、
そういう追加説明を付けておいた方がいいのではないかな、と。
 これだったら、
社外にもまだいそうですよね、と。

 ちなみに、
この点に関しては、
ベンチャー企業だとか研究集約度が高い企業だとか、
そういう如何にも特殊そうな企業でないのなら、
なぜ、あなたの会社が特殊なのか、そんなに簡単に適任者が見つからないのか、
そういう説得的な説明をしなさい、と、
そういう論調も一部であるよう。
 しかしながら、
まぁ、この点については、
所詮、水掛け論じゃないかなぁ、と。
 労働経済学でいうと「企業特殊熟練」という話があるように、
やはり、企業というのは、それぞれがどこかしこか特殊な部分がある、
そういう議論だって一方で可能のような。
 実際にも、
現場の知識とか、
それを埋め合わせるに足りるだけの業界知識・経験とか、
いわば土地勘ですよね、
そのような土地勘が無いと、
意思決定をしようとしても、
それに必要な情報の糸口や勘所が分からない、怖い、と、
そういうことは往々にしてあるんじゃないか、と。
 と、まぁ、
所詮、水掛け論のような話なわけですから、
100点を狙わないという方針からすると、
少なくとも当面は、
うちはどこが特殊なのかとか、
そこまで踏み込む必要は無いじゃないの?、と。


●その上で③ですが、
まだ見つかっていない、という記載ですね。
 将来を縛らないためにも、
「未だ」という限定、ニュアンスです。
 努力はしているという前提からも、
この限定は一応入れておいたほうがいいのかな、と思います。

 この部分、
敢えて「努力してます」とまでは書いてないのよ。
 というのは、
何を以って「努力」というのか議論がありそうですしね…。

 ちなみに、
現時点で適任者がいないという説明だけだと、
毎年繰り返すのが難しいのでは?と、
そういう議論が根強くあるよね。

 ただ、
長期雇用慣行と、それを背景にした役員の社内昇進慣行、
これらを前提として、日本では役員市場が殆ど育っていないわけ。
 この現状が変わらない限りは、
やはり深い業界知識・経験という条件をクリアした適切な候補者というのは、
そんなに簡単に見つかるわけではないんだ、と、
そういう議論をする余地も一方であるんじゃないかしら…。


●以上の①~③は、
主に社外取締役を置くとマイナスよ、という話。
 ただ、
それだけだと投資家は心配になるでしょう、と。

 なので、
ここからは、
一つは、置かなくても大丈夫ですよ、という話(④)。
 それから、
この話に絡める形で、
置かなくても大丈夫なのにムリして置くと、
むしろ屋上屋をかしてるだけでコストの観点からも適切でない、と、
そういうダメ押しでのマイナス話(⑤)。
 この2つを書いてるのが後半部分なのね。

 ここの部分は、
従来からの説明でもかなり触れられているところなので、
記載の流用はそれなりに効くのかな、と。

 要は、
社外取締役以外の、他の機関・制度によって、
社外取締役に期待される監督機能というのは、もう実現できているんですよ、と、
そういうことですね。

 そのような従来の記載でも一応の説明にはなってると思うんですが、
できれば、もう一歩踏み込んでおきたい部分がある。

 それは、
社外取締役と社外監査役の決定的違いの部分ですね。
 これは何か?というと、
取締役会での議決権の有無。
 今回の改正では、
この点が相当クローズアップされていたよね。
 取締役会における議決権が無いという違いを、
御社はどうカバーしているのか?と、そういう説明。

 もちろん、
議決権の有無という形式論はどうやったって乗り越えられないんですが、
だったら実質論でカバーすればいいわけ。

 ここでも重要なのは、やはり相場観。
 上場会社の7割程度は、
現在、社外取締役がゼロか1名と聞いた記憶。
 この相場観が前提である限り、
社外取締役が1名か、多くても2名入った場合との比較で、
実質、別にいなくても問題ないと、
そういう説明ができればいいわけよね。

 所詮、
1名、社外取締役を入れても、
議決権行使の結果を直接左右することなんて、できないわけ。
 そうなら、
議決権までは有さないとしても、取締役会で積極的に意見は言える、
それによって適切な議決権行使を促すことは可能である、
それで事実上、議決権を一票持ってる場合と余り変わらないよね、と、
そういう話を出せばいいのではないかな。

 社外取締役が過半数いる場合との比較までは不要。
 それは相場観を逸脱している状態だから、
あえてそのような状態との比較までを議論する必要はないんじゃない?

 ちなみに、
この④⑤の記載だけでも、
社外取締役を置くことはむしろマイナスと、
そういう問いへの答えにはなっているわけで、
この④⑤だけの記載で済ませられるのでは?、と、
そう思った方もいらっしゃるかも。
 だけど、
この記載からは、
選任努力をしているという前提が全く伝わってこないのね。
 それはちょっとまずいのではないかな、と。

 後、
コスト増の話だけだと、
将来、社外取締役を選任しようとなった時の説明が難しくなるかも。
 だけど、
適任者不在という理由と組み合わせれば、そこはクリアできそう。
 適任者がいないにもかかわらず、
単に形式的にのみ選任することは屋上屋をかすというストーリーであって、
適任者がいるならまた別よ、と。

 ということで、色々考えると、
①~③と④⑤を組み合わせるのが、
今のところは一番良いんじゃないかな、と。


●本日のツボはここまで。

 ちなみに、
単なるネコでしょ?」というツボからお分かりのとおり、
私はバリバリの社外取締役推進派ですよぉ(笑)。
 正直、
さっさと社外取締役を入れた方が楽なのに、とも内心思ってます。
 ただ、
私はあくまで弁護士、実務家なのでねぇ。
 「裁判官のコンプラ意識?」と「良くも悪くも前例主義?」、
この2つのツボを読んでいただければ、
少しは言わんとすることが分かってもらえるかしら。

 それに、
正直なところで言えば、
「社外取締役は会社の事業内容など詳しく知る必要は無い!」というのも、
一方で随分と乱暴な議論のように思ってなくもないんですよね。
 極論だし、語弊もあるだろうけど、
心臓外科医から心臓手術について一通りの説明を受けて、
この患者さんにはAの手術でいいと思うので賛成票を投じてくれますかね、と、
そう言われたときに、あなた、尻込みしませんか?、と。
 いや、
その場合には尻込みしていいんだ、賛否差し控えもOK、と、
そういう議論も一部あるようですが、
そんな人を置く意味ってどうなのかなぁ、とかね。

 まぁ、
まとめて言うと、
クセ球に頼るのではなく、
やはり法律で真正面から義務付けすべきだったんだと思うなぁ。
 こんな記事を書いたお前が言うなと言われそうだけど…(苦)。


(2012年12月6日記)
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