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●民法改正の中間試案について一言二言。


●既にご承知かと思いますが、
民法(債権法)の改正に関する中間試案、
これが4月16日から6月17日まで、
パブコメにかかってますよね。

 まぁ、
この総会シーズンのクソ忙しい時期に、
敢えてパブコメにかけるセンスについては、
色々と議論があるのでしょうけど(笑)、
それはさて置くとして、
何かウチのようなマニアックなブログにまで、
この改正についての質問が結構来てるんですよねぇ。
 民法ってさ、
実務でやるにも一番難しい法律だと思ってるので、
正直あんまり書きたくなかったんだけど、
結構同じ類の質問が集中してるみたいなので、
本日のツボはホントに触りだけだけど一言二言。


●まずはさぁ、
この民法(債権法)の改正の話を見聞きして、
いつも思い出されてくるのが、
ある法務省関係者から直接聞いた言葉。

 「少なからぬ学者が『民法の空洞化』に強い危機感を持ってるんです」

 この言葉を聞いたのは、
法制審の部会で本格的検討が始まる時期から、
更に数年くらい遡ったあたりだったんじゃないかという記憶。

 その後、
U先生が主導される形で、
民法改正について「大風呂敷」が広げられていくのは、
ご承知のとおりですね。

 私なんかは、
こういう「大風呂敷」な状況と冒頭の言葉を照らし合わせて、
何となく民法学者の焦りのようなものを勝手に感じ取っていました。
 また、
おそらくは多くの方と同様、
U先生が民法改正に関して書かれた新書を読むにつけ、

 「う~ん、見事なほどにツッコミどころ満載だなぁ」、と、

少々斜に構えて見ていたのは否定できないですね。

 ただね、
今回のこの中間試案、
まだ細かい点や補足説明を含めて、
全て詳細に検討できてるわけじゃないし、
一部これはどうなのかな?という部分もあるんだけど、
全体としての第一印象というのは、

 「アララ、予想してたよりは結構まともだねぇ~」、と。

 いや、
メッチャ「上から目線」の感想ですみませんが(笑)、
今のところの第一印象レベルではホントにそういう感じです。

 確か数年前ぐらいだったか、
かなり内部の方からの情報によれば、
改正議論が頓挫する可能性が高いとか、
そんな風に言われていた頃もあったはずで、
実際そのころの検討内容って、
傍目でチラ見していても「大丈夫なのかな?」って感じだったけど、
さすがに中間試案ぐらいまで来ると、
法務省の事務局をはじめとして、
各関係者の相当な努力もあってのことだと思いますが、
やはり結構まともになってるなぁ、と。

 で、
何が言いたいかというとさ、
この民法改正については、
色々と「陰謀論」(笑)というのかな、そういうの含めて、
未だに外野がワイワイ言ってる状況が続いてるんだけど、
さすがに「それなり」の改正につながる道筋は、
もう見えてきてるよねぇ、と。
 なので、
「陰謀論」ってのは得てして面白いんだけど、
そういうのに付き合ってる時間があるんなら、
中間試案の内容を検討し始めた方が良いんではないかな、と。


●でさ、
この民法改正について考えるとき、
やっぱり興味があるのは実務への影響なんですわね。

 で、
この実務への影響を考えるとき、
まず真っ先に考えないといけないこと、
それって何か分かりますかね?

 私なんかは、
こう答えますね。

 「その改正条項が強行法規なのか?任意法規なのか?」

 実務への影響を考えるとき、
まず以ってこの部分に触れてないモノは、
正直あまり読んでも仕方ないかもしれない。

 そもそも、
冒頭の言葉に立ち戻って、
何で民法が「ドーナッツ」(空洞)になってるかというと、
一つには民法の多くの条項が任意法規だからですよね。
 要は、
契約で以って民法のルールを修正可能だからです。

 この点、
契約書を日常的に作成している実務家なら、
契約書を作りこむときに一番最初に考えるべきことであって、
もう頭にこびり付いてる話だとは思いますが、
特に学者さんが書かれたモノとかだと、
この部分の検討が抜け落ちてるものもあるようなので、
念のため注意が必要かな。


●それから、
もう一つ検討の視点として持っておいた方がいいのは、
やはり立証責任の所在・困難性という視点ですかね。

 まぁ、
前提として要件事実論の理解が必要になるんだけど、
この要件事実論ってさ、
結構アレルギーのある方も未だに少なくないみたいですが、
無用の長物?」というツボでも少し触れたとおり、
実務的な視点からの論評をするのなら、
この視点は欠かせないのではないかなぁ。

 要は、
改正条文案に書かれている文言について、
それらをそれぞれ同格のような形で、
ノッペりと平坦に読んでるだけじゃぁ、
実務的な方向感を正確に捉えきれないかもよ、と。
 ちゃんと、
それぞれの文言を、
立証責任の観点から立体的に位置づけて、
事実上の立証の困難さなども踏まえて分析しなきゃならん、と。


●でさ、
こういう抽象的な議論だけだと伝わりにくいかと思って、
ブログに寄せられた質問に入っていくんだけど、
その中で一番多かったというか、圧倒的に集中してたのは、
具体的には以下で引用するような、
「債務不履行による損害賠償」(民法415条前段)の改正について。

 「民法第415条前段の規律を次のように改めるものとする。
 (1)債務者がその債務の履行をしないときは,債権者は,債務者に対し,その不履行によって生じた損害の賠償を請求することができるものとする。
 (2)契約による債務の不履行が,当該契約の趣旨に照らして債務者の責めに帰することのできない事由によるものであるときは,債務者は,その不履行によって生じた損害を賠償する責任を負わないものとする。
 (3)・・・。」

 まぁ、
寄せられた質問は色々なんですが、
まず以って一つ考えていただきたいのは、
「これがホントに強行法規なのか?」と、
そういう話なんですよね。

 私の理解が正しければ、
少なくとも現行の条文ってさ、
強行法規とまでは考えられてないはずじゃない?
 少なくとも実務では、
その前提で色々と条項を作りこんでるんじゃない?
 そういう前提でね、
今回の改正条文について、
これを敢えて強行法規化するというような、
そんな大胆なことまでホントに考えてるんですかね?
 その点が、
まずもって素朴に疑問でした。

 いただいたご質問の中には、特に2項に関して、

 「『契約の趣旨』というものが、
  契約書の文言を前提にして考えるのに加えて、
  契約書の文言だけで必ずしも決まるわけではないとされる以上、
  これは強行法規ですか?」、と。

 そういう類いのものもありまして、
最初聞いた時には「へぇ~、そうなの?」という感じでしたが、
どうにもこうにも違和感があるので少し考えてみるに、
その契約書で改正415条の適用を排除するとの特約が認められない場合、
当事者の帰責事由の有無を判定するにあたって、
その契約書の文言を前提にして考えられるのでしょうし、
場合によってはその文言だけで決まるわけではない、と、
そういうことになるのでしょうね。
 ただ、
逆に言うとね、
上記のご質問者が根拠として挙げている部分は、
そういう場面を念頭に置いたものなんじゃないのかな?、と。

 何が言いたいかというとね、
上記のような場合と、
その契約書で改正415条の適用を排除するとの特約が認められる場合、
これはまた別じゃないですかね?
 強行法規と言うと、
この後者のような場合において、
その特約が無効になるという話ですが、
それはまたちょっと次元が一つ異なる話であって、
上記のご質問者が根拠として挙げている部分から、
直ちに導かれてくる話じゃないような。

 もちろん、
仮にそういう排除特約が認められたとしてもね、
その契約書の内容でキレイに書かれてないこととかが問題になったら、
それは解釈の基本中の基本として契約の趣旨に戻るんでしょうね。
 ただ、
そのことと、
改正415条が強行法規であるということには、
その射程距離も含めて、
かなり大きな乖離があるような。

 それから、

 「『契約の趣旨』という言葉が気持ち悪いんですが…」、と。

 そういう感想めいた質問も、
結構たくさん寄せられてまして、
正直その気持ちも分からなくはないんだけどさ。
 ただ、
一つには先ほども述べたとおり、
この規定は強行法規なわけじゃないよね。
 それから、
現在でも裁判所は色々と好き勝手に解釈してる部分もあるし(苦)、
そういう裁判所のスタンスの背景というのかな、
そこで裁判所に持ち込まれた紛争の実態というものを直視した場合ね、
字面だけで明らかに結論が決まるような話でないこととかが多いのであって、
これは法律の解釈でも一緒だよね。
 紛争にまで発展するような難しい問題であればあるほど、
字面だけじゃ分からんし解決つかないとかで趣旨に遡ってみる、と。
 少し前で述べたことと重なるんだけど、
それが解釈の基本中の基本なんであって、
そこまで毛嫌いする必要もないんじゃないかなぁ、と。
 いや、
改正の議論を完全に追いかけられてるわけじゃないけど、
少なくともこの文言が入ることで、
従来の実務の内容が大きく変更されるとは、
ちょっと直ちには思えなかったんだよなぁ。

 この問題ってさ、
もっと言ってしまえば、
立証責任という視点を踏まえる必要があると思うんだよね。
 例えばね、
契約書の字面でキレイに書かれていることを、
その他の事情で覆そうというのであったら、
それって現実的には立証が大変なはずじゃない?
 そういう風に、
「契約の趣旨」として加味される事情のそれぞれを、
もっと立体的な形で位置づけた上で、
実務上の方向感を検討すべきなんじゃないかな、と。


●あんまり言い過ぎると、
ボロが出てきそうなので(笑)、
本日のツボはここまで。

 実際のところ、
民法改正を取り巻く話って、
外から見るとU先生のキャラが立ちすぎていて、
けっこう誤解されてる部分も少なくないのかもなぁ、と、
そんな感想を抱く今日この頃でした。
 個人的には、
キャラ立ちしてる人って、
嫌いじゃないんですよ(笑)。
 本文の中でね、
U先生について色々書いちゃったけど、
私自身は「契約の時代」に感銘を受けたクチです。

 ちなみに、
他にも舌鋒鋭いご質問/ご意見をいただいたりなどしてますが、
いかんせん民法という実務的にも非常に難しい話だし、
外野から改正議論を論評するってのもこれまた難しいんだから、
そんな「鬼の首を取った」感じで言わなくてもって、
個人的にはそういう感覚なのでね、
そこらへんは適宜反応を省略させていただきたく。


(2013年5月25日記)
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