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●日本版クラスアクションについて一言二言。


●ここんところ、
オモテ/ウラの世界を問わず、
会社法改正の話題が多いようですが、
先般の臨時国会で遂に成立にまで至った、
消費者裁判手続特例法、
いわゆる日本版クラスアクションに関する法律、
これも忘れてはいけないですね。

 この法律のインパクトについては、
実務家の中でも少なからず意見が分かれている面があり、
正直その評価が難しい部分もあるんだけど、
その背景あたりについて少しでも述べておこうかと。

 ということで、
本日の訴訟のツボでは、
日本版クラスアクションについて一言二言。


●まずはさ、
日本版クラスアクション制度の細かい部分を見ていく前に、
よく引き合いに出される米国との対比で、
そのコンテクストの違いを確認しておきたい。

 一般的にね、
米国では集団訴訟が盛んだと、
そう言われてるよね。
 その背景には、
通常3つのドライバーがあると言われてる。
 ①米国版クラスアクション制度
 ②ディスカバリー制度
 ③懲罰的損害賠償制度

 言わずもがなだけど、
今回成立した法案が対象としているのは、
米国でいうところの①の制度だけなんだよね。
 ②や③の制度については、
当然ながら特に何も新設されていない。

 なので、
まず一つ明確に言えることがあるとすれば、
今回成立した日本版クラスアクション制度によって、
直ちに米国並みに集団訴訟が盛んな状態になるか?というと、
それはさすがに違うんじゃないのかなぁ、と。
 そこまで至るには、
まだドライバーが足りんのだろうなぁ、と。


●もちろん、
クラスアクション制度のところだって、
日本版と米国版とでは結構大きな違いがある。

 米国との対比で、
日本版クラスアクションが特徴的なのは主に3点。
 ①提訴権者を一定の消費者団体に限定
 ②提訴対象を消費者契約に関する一定の請求権に限定
 ③オプトイン型の採用

 既にご存知の方も多いかと思いますが、
日本版クラスアクションというのは、
以下のような二段階の裁判手続を経ることが想定されている。
 一段階目:共通義務確認の訴え
 二段階目:簡易確定手続/異議後の訴訟

 このうち、
一段階目の手続というのは、
被告事業者が多数の消費者に対して、
共通する事実上・法律上の原因に基づき、
消費者契約に関する一定の金銭支払義務を負ってるかどうか、
そういう責任の有無を審理するもの。
 それから、
二段階目の手続というのは、
手続参加(オプトイン)した各消費者の請求可能額を確定する手続でして、
イメージとしては破産債権の届出手続みたいな感じかな。

 ポイントは、
各消費者が自ら積極的に手続参加(オプトイン)しない限り、
このクラスアクションの確定判決の効力が及ばないこと。

 なので、
各消費者としては、
一段階目の手続に敢えて自ら参加するのではなく、
事態の成り行きを静観することが可能であり通常かな。
 その上で、
一段階目の手続で事業者に責任の全部/一部が認められた場合、
次の二段階目の手続において、
これに参加して自分の債権を届け出るかどうか(オプトインするかどうか)、
どちらかを選べる立場にある。

 要は、
各消費者としては、
勝ち馬に乗れるわけですね。
 仮に原告である消費者団体が、
クラスアクションの一段階目で負けても、
その結論は各消費者を拘束しないので、
別途、個別に訴訟提起は可能、と。

 これは、
積極的にクラス除外の申出(オプトアウト)をしない限り、
クラスアクションの結論に縛られてしまう、
米国版クラスアクションと大きく違うところ。

 一見すると、
このようなオプトイン型というのは、
勝ち馬に乗れるという意味で、
消費者にとって有利なだけのようにも見えるんだけど、
クラスアクション自体の実効性を殺いでしまってる面もあるかな、と。
 というのは、
一般にクラスアクションというのは、
多数の消費者等が原告側となることで、
被告事業者に対する社会的圧力を強めることができ、
その結果、有利な和解に持ち込めるという副次効果も期待されてる。
 だけど、
オプトイン型ということで、
各消費者の積極的参加が必要となると、
多数性の確保が難しくなる面もあるし、
そうでなくても一段階目における多数の手続参加は余り期待し難いので、
上記のような副次効果が得られにくくなる可能性がありそう。

 それから、
冒頭のところで、
米国と異なり懲罰的損害賠償制度というドライバーがない、と、
そういう話をしたと思うんだけど、
日本版クラスアクションでは、
さらなる対象損害の限定がなされてるわけ。
 すなわち、
 ①拡大損害(消費者契約の目的物以外の財産に生じた損害など)
 ②逸失利益
 ③人的損害
 ④精神的損害
こういうものは日本版クラスアクションを通じて請求できない。

 さらに言えば、
そもそも論として、
消費者契約に関する履行請求、不当利得請求、損害賠償請求など、
消費者契約に関するものしか対象となってない。

 このように、
米国版クラスアクションと比べると、
やはり日本版クラスアクションというのは、
かなり対象が絞り込まれている面がある。

 もちろん、
この日本版クラスアクションができることで、
今よりは集団訴訟が増えていくんだとは思うんだけど、
そこで期待されるインパクトというのは、
一部の実務家が「お祭り騒ぎ」してるほど、
そこまでに大きなものではないんじゃないかなぁ、と、
少なくとも直ちに米国並みの状況にはならないのだろうね、と。


●でさ、
漠然とした全体感はこのぐらいにして、
この制度の細かい点でね、
直感的に「非常にイヤだなぁ」と思うところが何点かあるので、
それらを少しだけ。

 そのうちの一つが、
二段階目の手続冒頭に予定されている、
各消費者の参加(オプトイン)促進活動の部分。

 これってさ、
原告である消費者団体は、
債権届出期間末日の1カ月前までに、
公告のほか、知れてる対象消費者に対して個別通知しなきゃならん、と。
 ちなみに、
この個別通知は電子メールでもOKらしい。

 で、
この個別通知に先立ち、
被告事業者は、原告である消費者団体に対して、
自らが所持している、
対象消費者の氏名・住所・電子メールなどが記載された文書・記録、
これを開示しなきゃならん、と。
 被告事業者がこの開示を拒否した場合は、
原告である消費者団体は情報開示命令の申し立てができる、と。

 この情報開示、
事業者側としては、
凄くイヤじゃない?

 もちろん、
個人情報保護法上の第三者提供になるんだけど、
法令に基づく場合にあたるとして、
個人情報保護法を盾にした提供拒否もできない。

 事業者側の実務としては、
この情報開示を避けるために、
一段階目の手続で負けた/負けそうな場合には、
原告である消費者団体と別途和解するなどした上で、
あくまで事業者側から個別通知を送る形にしてもらうとか、
そういう工夫とかも出てくるのかもね。

 それから、
もう一つ挙げておくと、
日本版クラスアクションの提訴権を持つ消費者団体は、
クラスアクションの提訴に先立って、
被告となるべき事業者の財産に対して、
仮差押えを申し立てることができる、と。
 この仮差押え、
個々の対象消費者からの授権は不要なので、
事業者としては、
特に何の兆候もない中で、
ある日突然に仮差押え命令を食らう可能性がある、と。
 
 通常、
銀行その他の取引先との間の契約では、
自分の財産に仮差押えを食らったことが、
契約解除事由と定められてることが少なくないと思いますが、
そういう背景を前提にした場合、
この仮差押えの可能性というのは、
結構イヤじゃないですかね?


●本日のツボはここまで。

 気づけば、
もう年末ですね。
 今年は、
大好きな京都で、
家族と静かに過ごそうかと。

 年内に、
少なくとも後一回の更新を予定しているので、
ひとまず皆様、メリークリスマス!


(2013年12月24日記)
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