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●遅ればせながら(笑)、ブルドック事件の最高裁決定についての総論的な雑感です。


●昨年、M&Aや会社法で一番盛り上がった話題といえば、
やはり、このブルドック事件が漏れなく挙げられますよね。

 この事件の各種決定に関しては、
東京高裁の決定がおかしいという点は概ね意見の一致がみられるものの(笑)、
その他の決定、つまり最高裁と東京地裁の決定については、
論者の立場によって少し見方が異なるところがありますね。

 特に実業界に身を置く方と金融業界に身を置く方とでは、
けっこう意見が食い違うことが多いみたいです。
 まぁ、利害関係人の供述に伴う危険性を示した好例でしょう(笑)。

 ただ、一部の専門家の方を除いて、この話題をするときに、

 「前提となる視点が抜けてるんじゃないかなぁ」

 そう思うときがあります。

 本日のツボでは、その点について、お話したいと思います。


●さて、ブルドック事件の最高裁決定についてお話しする前提として、
この事件の事案を説明したほうがよいんでしょうが、
なんせ、もう既にご存じの方も多いと思いますので、飛ばします(笑)。
 事案の概要をおさらいしたい方は、こちらをご覧ください。

 で、このブルドック事件では、
色々な点が問題になりましたが、大きな問題点のひとつは、
ブルドックが採用した新株予約権のスキームは
株主平等原則に違反しないのか?という点でした。

 ホントにザックリと言ってしまえば、
ブルドックが発行した新株予約権のスキームでは、
一般の株主には、株式をあげるよ、
スティールとその仲間(スティール関係者)には、株式でなく、その分の現金をあげるよ、
これによってスティール関係者の持ち株比率を大幅に下げちゃうよ、と。
 まぁ、こんな仕組みになってたんですね。

 で、これはスティール関係者という一部の株主だけを差別して扱うことになるんですが、
さて、株主平等原則に違反しないんですか?、と。
 そういうお話です。


●まずは、そもそも論として、
新株予約権を既存株主に対して無償で割当てます、
その新株予約権に、先ほどのような差別的条件が入ってます、と、
そういう場面で、株主平等原則の適用があるのかね?、と、
そういう議論がありました。
 
 ここは本日の趣旨とはズレますので、簡単に済ませておきますが、
最高裁も、株主平等原則の趣旨は及びます、と、
要は株主平等原則が類推適用されます、と、
そう言ってます。

 まぁ、株主としての資格に基づいて、その新株予約権をもらうんだから、
株主平等原則の類推適用はあると考えて当然のような気もしますが、
何で、こんなことが議論になってたかというと、
経産省内の企業価値研究会が出した、かの有名な買収防衛指針の中で、
上記のような場面では、株主平等原則の適用はない、と、
そのように言ってる記載があったからなんですね。

 私は、経産省は結構がんばってるなぁと思っている一人なのですが(笑)、
さすがに、上記の記載とその理由づけは、
一部の利益代表者の意向に影響されすぎているなぁ、と、
最近はやりのソフト・ローの公正性に疑義を生じさせかねない悪例だなぁ、と、
そう本気で思ってましたので、
最高裁が先ほどのように確認してくれてホントによかったと思ってます。
 

●さて、株主平等原則の趣旨が及ぶとすれば、
先ほどのように、スティール関係者のみを差別的に扱う条件は、
原則としては、株主平等原則の趣旨に違反するよ、と、
そう判断されるはずです。

 しかしながら、株主平等原則があると言ったって、
何でもかんでも平等にせい、というのはおかしいでしょ?、と、
ある株主が支配株主になるせいで、
例えば会社が潰れかかったり、
そこまでいかなくてもメチャクチャにされそうな場合には、
その株主だけを差別的に扱ってもよいんじゃないですか?、と。

 だから、株主平等原則の適用があるとしても、
やはり例外はある、差別的な取扱いが認められる場合はある、と。

 最高裁は、こう言ってるわけです。

 で、実は、ここまでのロジックについては、
私の知る限りでは、余り異論はないんですね。


●問題はその先です。

 通常、例外論というのは、
①その例外を認める必要があるか、
②その例外を認めて不都合はないか、
この2つを見極めて判断されます。
 もちろん、最高裁も、この2つを意識しているわけです。

 最高裁は、先ほどのように言った後で、
株主平等原則の趣旨との関係で、
先ほどのような差別的取り扱いを例外として認める必要があるか、
言い換えれば、その差別されている株主が、
会社をメチャクチャにしそうな奴かどうか、
その点の判断については、原則として株主総会の判断を尊重する、と、
だって、会社が良くなるにせよ悪くなるにせよ、その結果を引受けるのは株主でしょ、と。

 で、今回の事件では株主総会で殆どの株主が賛成してますね、
その手続も適正そうだし、その判断が余りにおかしいとも言えそうにありませんね、と、
そう指摘したうえ、例外を認める必要性はある、と言ったわけです。
 後は、②その例外を認めて不都合はないか、
言い換えれば、スティール関係者に対する扱いが相当なものかどうかを見ますよ、と。

 まさに、この部分ですね、
決して少なくない方、特に金融業界の方から批判が出てくるところです。

 「株主総会の判断を尊重? はぁ?」、と(笑)。


●さてさて、このブルドック事件、
私も、その動向にかなり注目してきた一人ですが、
この最高裁決定が出てからズっと思ってきたのは、

 「ちょっと言葉足らずなのでは?」、と。

 原則として株主総会の判断を尊重する、という判断の理由として、

 「だって、会社が良くなるにせよ悪くなるにせよ、その結果を引受けるのは株主でしょ。」
 
 この理由だけではロジックに不足があるんじゃないか、と、
そう思うわけなんですね。


●といいますのも、
先ほどから問題となっている株主平等原則、
何でこんな原則があるのかというと、
多数派の横暴から少数派の権利を守るためにあるんですね。

 これまでの「人類の歴史」(笑)を見れば明らかだろうと思いますが、
だいたい差別的な扱いというのは、多数派が少数派に対して行うんですね。
 たとえ民主主義が採用されていても同じです。
多数派は、多数決を通して、少数派への差別的な扱いを決議することができちゃう。

 でも、さすがに、それはマズいでしょう、と。
 やはり少数派の権利をしっかりと守る仕組みがないと、
会社に対する投資が不必要に委縮してしまうのではないか、と。

 そこで採用された仕組みのひとつが、株主平等原則なんですね。
 仮に多数決で決議されたとしても、一部の株主に対する差別的な扱いはダメよ、と。

 で、このような考えで株主平等原則ができているにもかかわらず、
株主の殆どが「あいつはヤバい」って言ってるから例外を認めるべきだ、というのは、
さすがにおかしくないですか?、と。

 つまり、多数派の横暴から少数派を守るための原則なのに、
多数派が「あいつはヤバい」って言っているから原則の例外を認めるべきだ、って、
そんなロジックはちょっと変じゃないの?、と。
 そう思うんですね。


●で、です。
 
 私も、最高裁決定の内容に強く反対まではしないのですよ。
 私が言いたいのは、「ロジックが足りないのでは?」ということです。

 じゃぁ、何が足りないのか?、と言うと、

 「裁判所は万能ではない」

 この点だと思うんです。

 というのも、無理なんですよ、
裁判所に「そいつが支配株主になったら会社がメチャクチャになるかどうか」なんて、
わかりっこないんですよ。

 だから、裁判所は、その点について判断のしようがないわけです。
 でも、裁判所は判断できない、と言うだけで、ホントに終わらしていいのか、
そしたら、常に株主平等原則の趣旨に違反だ、となりかねないわけですが、
それはそれで、やはり、ちょっとおかしいでしょう、と。

 そこで、あくまでも「次善の策」として、
仮に株主総会の判断があるのなら、
裁判所は、まず、その手続きを見ます、と。
 例えば、株主総会にあたって、
虚偽の情報が出回ってないか、とか、
差別されてしまう株主がちゃんと意見を述べる機会が確保されていたか、とか。

 そういう手続きがしっかりとなされていて、
その結果として出てきた株主総会の判断については、
余りにおかしいと思えるような場合でもない限り、裁判所は尊重しましょう、と。
 だって、会社が良くなるにせよ悪くなるにせよ、その結果を引受けるのは株主だから。
 裁判所は責任とれないですからね。
 強いて言えば、団体自治の尊重とでもいいましょうか。

 でも、それはあくまでも、
①例外を認める必要性があるかどうかを見極める上で、尊重するというだけですよ、
その次の段階の、②例外を認めて不都合がないか、
言い換えれば、差別される株主の扱いが相当なものかどうか、
この点については、少数派の権利を守るために、裁判所がしっかりと見ますよ、と。
 
 こういうロジックなんだと思うわけですね。
 他に方法がないじゃない、あくまで次善の策だとはわかってますよ、と、
そういうことなんだと思うわけです。


●ちなみに、「公開買付けに伴う強圧性」、
もの凄くザックリと言ってしまうと(笑)、むやみに売り急ぎさせる効果ですかね?、
まぁ、そういうロジックを基調として
先ほどの点を説明する方もおられますが、
個人的には、上で述べたロジックの方が、
株主平等原則との関係もスッキリして、
スーっと入ってきます。

 もちろん、最高裁の決定も、
会社が防衛策をとる余地はあることを前提としてのロジックであって、
先ほど私が述べたようなロジックの前提として、
そもそも、防衛策をとる余地なんてあるの?、
公開買付けに応募するかどうかを個々の株主が判断すればよいのでは?、と、
そういう根本的な問題については、
「強圧性」のロジックを使って説明するのかもしれません。
 
 ただ、そのような神学論争を超えて、
つまり、会社が防衛策をとる余地はあることを前提として、
現に今、ある防衛策をとっても良いかどうかという判断をする際には、
結局、株主総会の判断を尊重する以外には良い方法がなかなかないじゃない?、と、
先ほどの私が述べたようなロジックになるのであって、
その中で「強圧性」を全面に押し出して論じても仕方ないんじゃないかなぁ、と。

 基準日時点の株主と総会時点の株主がズレていることを問題にして、
「強圧性」のロジックがないと、株主総会の判断の正当性を基礎づけられない、と、
そういう言い分もあるようですが、
まぁ、それは東京地裁も言うように、制度上、もうやむをえないんじゃない?、と。
 実質株主の確定を始めとして総会招集手続きには時間かかるわけだし、
どうやったってズレるわけですよ、それは。
 それに防衛策を決議できるような機関は、取締役会か株主総会か、
この2つしかないわけですしね。
 で、取締役会が決議すれば、
事前に防衛策を仕込んでない限りは(仮に仕込んでてもですが)、
「自己保身じゃないの?」とか言われるわけですから。
 
 もちろん、防衛策は一切ダメだというなら話は別ですよ。
 そもそも、「強圧性」が認められないのなら、
基準日時点の株主と総会時点の株主がズレているなどという問題より前に、
何で会社が防衛策をとる余地があるんだ?、と、
そういう根本的な問題が復活しちゃう可能性があるんじゃないですかね。

 なお、最高裁は、手続的な問題からかもしれませんが、
東京地裁とは異なって、「強圧性」のロジックについては何も触れてませんね。


●ついでですが、最高裁の決定について、
最高裁は、手続面しか見ないんだという評釈があるようなんですが、
それは違うんじゃないの?、と、
そう思います。

 というのも、最高裁は、その具体的な判断部分において、手続きの適正さの点に続けて、
「また、上記判断は、抗告人関係者」(スティール関係者のこと)「において、発行済株式のすべてを取得することを目的としているにもかかわらず、相手の経営を行う予定はないとして経営支配権取得後の経営方針を明示せず、投下資本の回収方針についても明らかにしなかったことなどによるものであることがうかがわれるのであるから、当該判断に、その正当性を失わせるような重大な瑕疵は認められない」、と、
そう言ってるんです。
 
 明らかに判断の理由にまで踏み込んでますよね。
 もちろん、その踏み込み方は「浅い」わけですが(笑)、
手続面だけしか最高裁は見ないとは言えないんじゃないですかね。

 おそらくは、最高裁が抽象的にルールを定立した部分、つまり、

  「判断の正当性を失わせるような重大な瑕疵が存在しない限り、
   当該判断が尊重されるべきである。」

という部分の、まさに直前に挙げられた具体例が、

  「株主総会の手続が適性を欠くものであったとか、
  判断の前提とされた事実が実際には存在しなかったり、虚偽であったなど」

とされていることから、
最高裁は手続面しか見ないんだ、という評釈につながるのかもしれませんが、
先ほどのように最高裁の具体的な判断部分を見る限りでは、 
「判断の正当性を失わせるような重大な瑕疵が存在」するかどうかは、
その判断が余りにおかしいと言えるかどうか、という点を含めて、
決せられるように読めると思うんですね。


●ブルドック事件には、この他にも、
公開買付者が事業計画を持ってないとホントにダメなのか?、とか、
相当性を基礎づける補償額は公開買付者の設定した買付け価額がベースなのか?、とか、
株式の持合い状況が進んでいたらどうなのか?、とか、
ブルドックが事前に防衛策を仕込んでたら何か判断が変わったのか?、とか、
東証は何でブルドックを上場廃止にしなかったんだ?、とか、
まぁ、色々あるわけですが、それをやってたら切りがないので、
本日のツボは、ここまでということで。

 今日は、かなり挑戦的に書いてみました(笑)。時間かかった・・・。

 ちなみに、ブルドックに対する東証の対応(あと事前警告型防衛策も)が、
今の日本の株安に繋がっていると本気で思っているのは、
私だけなんでしょうか。
 日本市場は、世界の資本の目からみれば、
数ある市場のうちの一つにすぎないんですがね。
 カネ余りの時期なら問題なかったんでしょうが。


(2008年1月20日記)
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