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●西の方では「マクドの店長」ですかね?(笑)


●各種報道でご存じの方も多いかと思いますが、
先月28日、東京地裁がマックの店長は「管理職」に非ず、と、
だから残業代を払ってあげなさい、と、
そういう判決を出したことが大きな反響を呼んでおりますね。

 どこだったか忘れちゃいましたが、外食チェーンの大手が、
この東京地裁の判決を受けて、店長の管理職扱いを止めるという報道もあった記憶。

 未だ判決全文を読めていないこともあり、
この事件の評釈を本日のツボで書くことはできないんですが、
ただ、この事件を考える材料として、
日本の労働時間法制に関する総論的な雑感を述べたいと思ってます。


●既にご存じの方も多いかと思いますが、
まず大前提として確認しときたいのは、
日本の労働時間法制の原型は、工場法にあるということ。

 工場法、何となくわかりますかね?
 ザックリと言うと、工場労働の最低基準を定めたものです。

 ここで工場労働とは、どういうものが想定されているかというと、
ベルトコンベアーで組立中のものが流れてきて、
それに対して労働者が自分の分担作業を施していく、と、
そんな感じなんだと思ってください。

 で、このような工場労働に関しての重要なポイントは、
労働の成果が労働時間にほぼ比例しているということですね。

 労働者が長く働けば、その分だけ成果も出ている、と、
そういうフィクションが成り立ちやすいんです。

 そして、そうであるからこそ、
一定の時間以外働いたのであれば、その分だけ成果も出てるんだから、
お金も、いつもより多く払ってあげなさいよ、と、
つまり、法定外労働時間に対する割増賃金の支払強制という発想が出てくるんですね。


●でも、です。

 もう既に耳にタコができた方もおられるかと思いますが、念のために確認しとくと、
日本の産業全体におけるサービス産業の比重の高まりなどに伴って、
日本の少なからぬ職場において、上記のフィクションが成立しにくくなってますよね。

 つまり、労働者が長く働けば、その分だけ成果が出ているなんて保証はない、、
労働の成果と労働時間との間に、比例関係を見出すことは難しい、と、
経営者の視点からすれば、そのように映る職場が増えてきた。

 しかし、日本の労働時間法制は、つい最近まで、先ほどのとおり、
労働者が長く働けば、その分だけ成果も出ている、と、
そういうフィクションを前提にして、割増賃金の支払強制などをかけていた。
 
 だから、現実の労働のあり方と、労働時間法制との間に、
ちょっとやそっとじゃ埋められないほどの大きなひずみがあったんです。

 そして、そのような大きなひずみを前にして、
日本の労働時間法制なんて、どうせ「守れない法律」でしょ?、と、
経営者の深層意識に、そのように刻み込まれてしまっていたわけです。

 行政の方も然り。
 やはり法律の内容が現実と大きく齟齬している中で、
違法状態に対して思い切った摘発など行えなかった。

 このような時代が随分と長く続いたんですね。


●しかし、やはり時代は回るわけです。
 そのような時代に終りを告げる出来事があった。

 それは何か?というと、
色々と諸説があるし、決して一つではないわけですが、
少なくとも大きな出来事のひとつとして挙げられるべきなのは、
平成15年における企画業務型裁量労働制についての導入要件の緩和でしょう。

 そもそも、裁量労働制とは、
もちろん、深夜労働とか一定の限界はあるものの、
何時間働こうが、予め定めておいた労働時間数だけ働いたものとみなしてまう、
そのことによって労働時間と賃金の関係を断ち切ろうと試みたもの。
 
 そして、導入当初である昭和62年の労基法改正では、
研究開発などの特殊な専門業務にだけ認められていた、この制度が、
平成10年の労基法改正には、経済界からの強い要望に応えて、
いわゆるホワイト・カラーが従事する企画・立案業務にも認められていく。
 
 もっとも、平成10年の労基法改正の段階では、
その導入要件として、労使委員会の全員一致などが要求されていたり、
本社で働く労働者に関してだけに限定されていたり、と、
実際のところ、とても導入できる代物ではなかった。

 それが、平成15年の労基法改正において、
労使委員会の全員一致までは要求せずに、5分の4の多数決でよい、とか、
本社で働く労働者に限定しなくてもよい、とか、
もちろん、導入までに経なければならない手続きはそれなりにあるものの、
非現実的なまでの負担は取り除かれたわけです。

 この平成15年の労基法改正が実際に適用され始めたのが、平成16年1月1日。

 
●で、何が言いたいかというと、
この平成15年の労基法改正を見て、
少なからぬ実務家が思ったことは、

 「アレ、『守れる法律』になっちゃってきてないかい?」、と(笑)。

 もちろん、行政もそう思ったわけです。
 そのため、労働時間法制の本来の趣旨である健康問題に立ち返ることになる。
 そして、この頃から、猛烈な勢いで残業代未払いの摘発が始まっていく。

 若干こじつけもあるかもしれませんが、全体感はこんな感じのはずです。


●で、特に平成15年の労基法改正を見て、実務家が懸念したのは、
冒頭でのマックの店長の事件でも取り上げられた、
労働時間法制の殆どが適用除外となる、「管理職」ならぬ「管理監督者」の問題。

 これまでは、「管理監督者」に該当させる以外には、
労働時間と賃金の関係を断ち切ることはできなかったわけですが、
企画業務型裁量労働制の創設、そして、その導入要件の緩和によって、
「管理監督者」にまで該当させなくてもですね、
企業業務型裁量労働制を導入することによって、
ホワイト・カラーの一定部分について、
労働時間と賃金の関係をある程度まで断ち切ることが可能になったわけです。

 これを見て、今後は、「管理監督者」への該当要件が、
従前の裁判例が挙げていた判断基準に厳密に沿った形で、
厳しく判断されていくのではないか、と、
少なからぬ実務家の間で、そう予想されていたわけです。

 随分と長くなっちゃいましたが、
冒頭のマックの店長の事件も、
このような流れの中で読んでいかないといけないのだと思ってます。


●本日のツボは、これでおしまい。
 ちなみに、最近は「ワーキング・プア」という問題が喧伝されてますが、
日本企業も、グローバル競争に否応なく曝されて、
賃金の安い中国などとも競争せざるを得ない現状に鑑みると、
これは企業側を責めればいいだけの問題ではないように思うのは私だけでしょうかね。


(2008年2月9日記)
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