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●ベタなネタですが(笑)、委任状勧誘に関する法的ルールのおさらいとして。


●「プロキシー・ファイト」って言葉、
どこかで一度は聞いたことあるねぇ、と、
最近は、そういう方も少なくないんでしょうね。

 日本語で言うと「委任状勧誘合戦」(笑)、
日本の企業社会では、かつては殆ど皆無だったようですが、
既にセピア色の感がある、2002年の東京スタイル事件を皮切りに、
最近は某ファンドさんの活躍もあってか、
一躍、知名度が増した感がありますね。

 本日のツボで取り上げるのは、
そのような委任状勧誘に関する法的ルールの基本問題。


●委任状勧誘に関する法的ルールと言った時に、まず確認しときたいのは、
けっこう忘れられがちなんですが、会社法なんです。
 具体的には会社法310条ですね。

 そこでは、株主は代理人によって議決権行使ができる、と、
そういう大原則を初めに確認してくれてますね。
 それから、代理権は書面によって証明しろ、とか、
会社が代理人の数を制限することは可能だよ、とか、
そういう有名な規制を定めてくれてますが、
一つ、基本的なところで念のために押さえてもらいたいのは会社法310条2項の点。

 これは何を言ってるかというと、
株主は、代理権の付与を、個別の総会毎に行わなければならない、と。
 例えば、今後5年間、A社の株主総会における議決権行使を任せます、と、
そういう形での代理権の付与はダメなんですね。
 この部分、ちゃんと対応できてない会社も現にあるみたいなので気をつけて。 

 後、会社法上の規制ではないのですが、
各会社の定款で通常よく定められてるルールが、
代理人となり得るのは株主だけですよ、と。
 このようなルールを定めることも、
定款自治の一環として、原則有効と考えられてますね。


●さて、そのような会社法上の規制を確認した上で、ようやく真打ちの登場(笑)。
 金商法上の、いわゆる「委任状勧誘規制」と言われるものです(金商法194条等)。

 まず確認しときたいのは、この委任状勧誘規制の適用対象となる会社の範囲。
 結論だけ言っちゃうと、上場会社onlyなんです。

 で、ここで気を付いていただきたいのは、
上場会社って通常、株主数が1,000人超えてますよね?
 だから、委任状勧誘規制の適用対象となる会社って、
通常は、会社法上の書面投票制度が義務付けられてる会社でもあるんです。

 こういうこと言うと、よく聞かれるのが、

 「書面投票制度が採用されてる会社なら、
  書面投票の勧誘を行えばいいのであって、
  委任状の勧誘なんて不要なんじゃないの?」、と。

 ここは既に議論が尽くされてる感があるので、簡単に済ませますが、
例えば、会社提案議案の全てに対して賛成の書面投票用紙をもらったとしてもですね、
会社提案議案に対する修正動議については反対票として扱うことはできても、
議長不信任動議とかの手続的動議については反対票として扱うことはできないんですね。

 でね、
会社提案議案の全てに対して賛成の書面投票用紙を十分に集められたことに安心したのか、
会社が委任状の勧誘をサボってたために、
総会の冒頭で、議長不信任動議が出ちゃって、
これを否決するに足りるだけの票が集まらず、逆にこれが通っちゃった、と。
 いやホントに、そんな笑えない話が現実に起こったやにも聞いてます。

 ですから、書面投票制度を採用してれば委任状勧誘は不要か?、というと、
そんなことは全くないわけですね。


●問題は、その先。

 委任状勧誘規制というのは、
上場会社の総会における議決権行使について、
これに関する委任状を勧誘する際には、
委任状用紙および参考書類の交付と財務局への提出、
そのような手続きを要求するものです。

 ただ、こういう手続きが免除される場合もあるわけです。
 そういう場合で一番有名なのが、いわゆる10人未満ルール。
 委任状の勧誘先が10人未満であれば免除してあげます、と、そういうルール。

 でもね、この10人未満ルールって、
会社とか役員が委任状勧誘する場合には適用ないわけ。
 つまり、会社とか役員が委任状勧誘する場合には、
その勧誘先がね、たとえ1人であっても委任状勧誘規制に則った手続きを行う必要がある、と。

 で、そのような10人未満ルールに照らして、
少なからぬ上場会社さんが未だに行っているのが、以下のような対応。

 「いや、確かに大株主さん2、3名から包括委任状を貰ってますよ。
  でもね、それって、うちの総務部の人間が個人的な立場で貰ってるだけなんです」って。

 これ、わかりますかね?
 包括委任状をもらってるのは、会社でも役員でもない、と。
 従業員の個人的行為として、大株主の数名から包括委任状を貰ってるだけよ、と。
 だから、10人未満ルールの下、委任状勧誘規制に則った手続きは不要でしょ?、と。

 問題はね、こんなのってホントに許されるのかい?、と。
 
 
●さてさて、結論から言っちゃとね、

 「やっぱアウトでしょ?」、と(笑)。

 昭和の時代ならまだしも、
平成の時代、しかも平成元年生まれが成人式を迎えるような時代にあっては、
誰が考え出した理屈かは知りませんが、もう、そのような対応は通じないでしょうよ、と。

 どう考えたって「会社の行為」ですよね、それ・・・。
 もし裁判所に行くことがあったら、担当裁判官からは、たぶん鼻で笑われますよ。


●でもね、そういうこと言うと、

 「じゃぁ、実務上どう対処したらいいのよ?」、と。

 先ほど見たとおり、会社が委任状勧誘する場合には、
その勧誘先が1人であっても、委任状勧誘規制に則った手続きを行う必要がある、と。

 「総会毎に、そういう手続きをやるのって、非現実的なんじゃないの?」、と、
そういう意見を持たれている総会担当者の方は意外に多いみたいですね。
 だからこそ、未だに上記のような対応が無くならないみたいなんですね。
 
 で、お待ちかね(?)の対応方法ですが、
まず一番安全なのは、大株主の役職員の方に包括委任状を持って出席してもらう、と。
 これなら、会社が委任状勧誘した、ということには通常ならないでしょうから、
委任状勧誘規制への抵触は避けられるんでしょうね、と。

 ただ、そのように大株主の役職員の方が常に出席してくれるとは限りません。
 特に色んな会社に投資されているような所だと、人手が足りないかも。
  
 そこで次善の策として、ひとつ考えられ得るのは、
会社提案議案に関するものを含めた、いわゆる包括委任状までは貰わない、と。
 その代りにね、以下の2セットを大株主から貰っとく、と。
 
 ①会社提案議案全てに対して賛成の書面投票用紙
 ②手続的動議に関する白紙委任状

 この2セットによればね、
委任状勧誘規制に則った手続きを回避しつつ、
会社提案議案に対する修正動議にも対応可能だし、
議長不信任動議を始めとする手続的動議にも対応可能だね、と。 

 ただ、念のために言っておくと、
上記②のような手続的動議に関する白紙委任状の勧誘がね、
ホントに委任状勧誘規制の適用対象外なのかどうか、という点については、
未だ解釈が確立していないようなんですね。
 まぁ、委任状勧誘規制の条文解釈からすると、
適用対象外と解するのが合理的だとは思いますけどね。

 後、委任状を出しているので、総会出席扱いとなり書面投票は無効では?、と、
そういう問題についての解釈も未だ確立していないようではありますね。
 ただ、この点についても、
一部議案に係る委任状と、他の議案に係る書面投票との関係についての議論を参照すると、
結論としては、問題なしと解するのが合理的だと思いますが。


●ちなみに、ここまで書いてて何ですが(笑)、
総会毎に、委任状勧誘規制に則った手続きをやるのって、そんなに非現実的かな?、と。

 会社が委任状勧誘する場合に取るべき手続きって、
委任状用紙および参考書類の交付と財務局への提出、
この2つなんですが、そのうち前者の参考書類の内容って、
書面投票制度で要求される参考書類の内容と殆ど同じなんですよね。

 最初の方で言ったとおり、
委任状勧誘規制の適用対象となる会社って、
結局、通常は書面投票制度も採用する会社なんです。

 だから、委任状勧誘規制で要求される参考書類の内容って、
実はもう殆ど出来てるはずなんですよね。
 しかも、書面投票制度で要求される参考書類と重なる部分は省略記載も可能。

 あと残ってるのは、委任状用紙の交付と財務局への提出ですが、
委任状用紙の交付は、委任状勧誘規制の適用にかかわらず必要だろうし、
また、財務局への提出についても、
書面投票用紙と書面投票制度で要求される参考書類が全株主に渡ってれば免除可能。

 だから、まぁ、悩むぐらいなら、そのぐらいの手続き、やっちゃったら?、と。


●さらにちなみにですが、
仮に委任状勧誘規制に違反した場合、 
総会決議が無効とか取消しとかになっちゃうのか?、という点。
 あり得るとしたら、総会決議の取消しの方なんですが、
この点も解釈としては必ずしも固まってない。

 ただね、
何度も言うとおり、委任状勧誘規制の適用対象となる会社って、
通常は書面投票制度も採用する会社なんです。
 ですから、書面投票制度で要求される参考書類は、株主の手元に渡ってるはず。
 その参考書類の内容と、委任状勧誘規制で要求される参考書類の内容は殆ど同じだから、
仮に委任状勧誘規制の違反が取消事由に該当すると解釈されたとしても、
裁判所で、決議取消の訴えを、裁判官の裁量で棄却してもらえる可能性は少なくないかも。


●本日のツボは、これでおしまい。
 ちなみに、委任状勧誘規制については、
「そもそも『勧誘』って何よ?」、と、
そういう難しい論点があるのですが、
余りブログ向きではないので、、本日のツボでは体よく回避しました(笑)。

  この点、一つ言えることがあるとすれば、
最近の論文で提唱されている「勧誘」の解釈の中には、

 「罰則のある条文の解釈としては、ちょっと広すぎじゃない?」、と。

 思わず、そうツッコミを入れたくなっちゃうモノが少なからず存在することですかね。
 もちろん、一つの議論としては面白いと思いますが、
実務対応としては余り鵜呑みにされない方が良いのかな、とも。
 まぁ、悩むぐらいなら手続きしとけば?、と、そういう対応もありかとは思いますがね。 


(2008年6月9日記)
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