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●「う~ん、スジ悪だねぇ」って言われたら?


●「スジ」、正式に(?)言うと「事件の筋」となりますかね。

 いや、大事ですよ、ホントに。

 ここを間違えると、
勝てる事件で安く和解し、負ける事件で和解せずに頑張っちゃいます(笑)。


●まぁ、これを一言で説明するのは、なかなか難しいのですが、
敢えて誤解を恐れずに、私の経験に照らして言えば、

 「自分の目指している結論が、法律上の諸原則と関連証拠等に照らしたときに、
  原則として支持されるものなのか、例外論に位置づけられるものなのか?」

このような実務上の感覚を指しているものだと思います。


●まぁ、抽象的に説明しても難しいと思いますので、
あくまで教室ケースになってしまうかもしれませんが、
契約の成立場面を例に説明していきたいと思います。

 例えば、今、AさんとBさんとの間で、
中古車の売買契約の成立が問題になっているとします。
 果たして、Aさんは、その所有する車を、
Bさんに対して20万円で売らないといけないのか、
そういう場面だと想定してください。
 

●このような場面を前提に、まず、
Aさんが以下のような主張をしていたらどうでしょうか?(事例①)

 「Bさんに対して、『売ります』などと申込みや承諾をしたことはない」と。

 他方、Bさんは以下のように主張しているとします。

 「何を言ってるんだ。
  あの時、確かに『売ります』って言ったじゃないか」と。

 その主張に沿ったBさんの陳述書も出てきました。

 でも、中古車の売買契約を示す契約書などの書類は何も出てきていない、と。

 このような場面においては、
おそらく殆どの弁護士さんが、Aさんにこう言ってくれると思います。

 「AさんとBさんの当事者尋問の結果にもよりますが、スジはいいですね。
  現時点では特に和解を目指す必要もないでしょう。」


●次に、先ほどとは異なり、
Aさんが以下のような主張をしていたらどうでしょうか?(事例②)

 「確かに『売ります』とは言いましたよ。
  でも、それはBさんから騙されたんです。
  どう考えても、この車で20万円なんて安すぎますよ。」

 で、Aさんは、その車について、
買取りの際にBさんから指摘された点、例えば型式やエンジンの音などを挙げて、
「Bさんから騙されたんだ」という趣旨の陳述書を提出しました。

 それに対して、Bさんは、こう主張しているとしましょう。

 「私は、中古車ディーラーとして当然指摘すべき点を指摘したまでです。
  Aさんも、あの時には、ちゃんとそれに納得して判を押したはずです。」

 で、Bさんは、中古車の売買契約を示す契約書を提出しました。
 
 このような場面においては、
おそらく多くの弁護士が、Aさんにこう言うでしょう。

 「う~ん、余りスジは良くないですねぇ。
  今後こちらから追加的に出せる証拠の内容にもよりますが、
  早い段階で和解を試みた方がよいんじゃないでしょうか。」


●さてさて、
単純な事例なので結論は見えやすいのかもしれませんが、
ポイントは、これらの事例から何を引き出せるかという点です。
 
 言い換えれば、事例①と事例②の本質的な違いは何か、ということです。

 
●まず事例①についてですが、
これはAさんの主張の方が、法律上の原則に則っているんですね。

 というのは、法律上、契約は申込みと承諾が合致して初めて成立なんです。
 自ら申込みも承諾もしてない内容に拘束されるいわれはないという大原則ですね。

 だから、そもそも、Aさんの主張内容は、法律上、原則的に支持されている、と。

 なので、Aさんは、とりあえず、
これ以上頑張って自らの主張を裏付ける証拠などを出す必要はないんです。

 他方、頑張らなきゃいけないのはBさんです。
 
 このような場面で、Bさんは、まず何よりも、
Aさんが「売ります」と言ったんだと、
言い換えれば契約の申込みなり承諾をしたんだと、
そういう主張を裏付けるための証拠を出さないといけない。

 でも、事例①では、そのような証拠、典型的には契約書ですが、
これを提出できていないんです。

 まとめれば、事例①においては、
Aさんの主張は、法律上の原則に支持されている、
そして、その支持を例外的に覆すような主張と証拠は
相手方であるBさんから何も提出されていない、と。
 こう言えると思います。


●次に事例②についてですが、
これは事例①とは逆に、Bさんの主張の方が、法律上の原則に則っているんですね。

 先ほどのとおり、法律上、契約は申込みと承諾が合致したら成立です。
 
 そして、AさんもBさんも、中古車の売買契約について、
申込みと承諾があったことについては何も争っていない。

 現に中古車の売買契約を示す契約書も提出されているわけです。

 だから、そもそも、Bさんの主張内容は、法律上、原則的に支持されている、と。

 なので、Bさんとしては、とりあえず、
これ以上頑張って自らの主張を裏付ける証拠などを出す必要はないんです。

 他方、今度は頑張らなきゃいけないのがAさんです。
 
 このような場面で、Aさんは、まず何よりも、
Bさんが不当にAさんを騙して判を押させたんだ、と、
つまりは、Bさんの詐欺に基づいて承諾したんだ、だから承諾を取り消せるんだ、と、
そういう主張を裏付けるための証拠を出さないといけない。

 でも、事例②では、
そのような説得的な主張や証拠が出てきそうな雰囲気ではなさそうです。

 まとめれば、事例②においては、
Aさんの主張は、法律上の原則に支持されてはいない、
なので、法律上の支持を取り返すべく、
自ら頑張って法律上の原則を覆すに足りる主張と証拠を出さないといけない、
でも、そのような主張と証拠を出せそうには見えないなぁ、と。
 こう言えると思います。


●以上から、事例①と事例②の本質的な違いをとりまとめるとこうなります。

 「Aさんの目指している結論が、法律上の諸原則と関連証拠等に照らしたときに、
  原則として支持されるものなのか、例外論に位置づけられるものなのか?」

 この点が「スジ」の良し悪しを決めているんだと、私は思います。


●ちなみに、事例①と事例②の説明からもお分かりいただけるかと思いますが、
「スジが悪い」事件ほど、ホントに勝とうと思うなら頑張らなきゃいけないんですね。

 だから、「スジが悪い」事件ほど、
勝率は悪いのに弁護士費用は高くなりやすいんです。

 得てして、お客さんは、負けたとわかった後で、
「何で負けたのに弁護士費用がこんなに高いんだ」
とおっしゃりますが(笑)、
それには上に述べてきたような事情があるんですよ、と。

 そのからくりがわかれば、
和解をすべきかどうかという判断もしやすくなりますし、
担当した弁護士さんに対しても優しくなれますよね?(笑)


●本日のツボはこれでおしまい。
 う~ん、何で長くなるんだろう・・・。


(2008年1月3日記)
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