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●遅くなりましたが、とりあえず、私なりの裁判例分析を簡潔に。


●かなり前になりますが、、、
マックの店長さんは「管理監督者」に非ず、と言った東京地裁判決に関連して、
少し労働時間規制のお話をしましたね。詳しくは、こちらへ。

 少なからず反響もありましたので、
遅ればせながら裁判例のポイントなどを書きつけておこうかな、と。


●まず、この東京地裁判決が示した判断基準ですが、以下のとおり。

 ①職務内容、権限及び責任に照らし、労務管理を含め、
  企業全体の事業経営に関する重要事項にどのように関与しているか
 ②その勤務態様が労働時間等に対する規制になじまないものであるか否か
 ③給与(基本給、役付手当等)及び一時金において、
  管理監督者にふさわしい待遇がされているか

 従前の裁判例や通達による行政解釈に概ね沿った形で、
権限、勤務態様、それから待遇の3つがメルクマールとなってます。

 では、それぞれのメルクマールについて、ポイントを見ていきましょう。


●まず、一つ目のメルクマール、①権限の点です。

 この裁判例の少し特徴的なところでもありますが、
「企業全体の」事業経営に関する重要事項への関与を問題としている点がポイント。

 このマックの店長さんというのは、
過去の数十例にわたる管理監督者に関する裁判例と比較しても、
当該事業場たる店舗の中での権限は、比較的ちゃんと持っていた方なんですよね。

 ちなみに、過去の管理監督者に関する裁判例は、
私の知る限り、5例を除いて、すべて管理監督者性が否定されております。 
 そして、否定例の殆どが、一見して明らかに、
当該事業場において、余りまともな権限を有していなかった事例のように読めるんです。
 そういう意味では、このマックの店長さんは、
当該事業場のレベルで言えば、結構いい線を言っていたようにも思えます。

 ただ、東京地裁は、この権限のメルクマールに関しては、
事業場(≒店舗)のレベルではなく、企業全体のレベルで見るんだと、
で、このマックの店長さんというのは、当該事業場(≒店舗)を越えた権限は持ってないね、
だから、このメルクマールではアウトだね、と、
そう言っているように読めるんですよね。

 で、問題は、
こんな風に、事業場単位ではなく、企業全体の単位で見るのが、
法解釈としてホントに正しいのか?、ということなんでしょう。
 
 特に労働時間規制などについて、
事業場単位を原則としているように見える労基法の素直な解釈としては、
上記メルクマールについても事業場単位で解釈すべきようにも思えます。

 ただ、そういう解釈を単純に貫くとですね、
特に今回のマックのような事業形態において顕著ですが、
かなり小さな事業場が多数分散しているような場合であっても、
その一つの事業場の長であって、そこの権限を殆ど有しているから、ということで、
すぐに「管理監督者」として扱って、労働時間規制を適用除外してよいのか?
 そういう疑問が生じるわけですね。

 おそらく今回の東京地裁の判断にも、
そういう疑問が根底にあったのではないかな、と。

 で、東京地裁の挙げた判断基準の読み方としても、
小さな事業場が多数分散しているような事業形態においては、
今回の判断のように当該事業場を超えた権限を持っているか否かが問題になるけれども、
比較的な大きな事業場の単位でしか分かれていない事業形態においては、
必然的に、それぞれの事業場が企業全体にもたらすインパクトが大きいので、
当該事業場単位で満足な権限を持っていれば、それで足りる可能性もあり、と、
そういう読み方になるのかな、と。 
 で、そういう読み方でOKなら、私は強く反論はしません。


●次に、二つ目のメルクマール、②勤務態様の点です。

 何といってもポイントは、
60日以上もの連続出勤や月100時間を超える時間外労働に代表されるような、
少し常軌を逸した長時間労働に及んでいた点でしょうね。
 もう、この点だけでも、
裁判官の心証は有罪に傾いたんじゃないかな(笑)。

 このメルクマールについては、
まずは、遅刻や早退についてですね、
・減給などの不利益取扱いがないか、
・許可制などが採られているか、
が問題とされるのが一般的ですね。
 東京地裁の判決も、その点はクリアされていると言ってるようです。

 でも、仮にそのような規制がなかったとしても、
事実上、長時間労働を強いられるような状況にあれば、
そもそも不利益取扱いがないことなどの意味なんて無くなっちゃいますよね、と。
 まぁ、これは従前の裁判例でも幾度か言われてきたことです。
 で、本件も、主にここでアウトになります、と。

 ちなみに、本件では、原告さんが従業員育成に失敗したことも、
原告さんの長時間労働の一因にはなっているようです。
 ただ、それにしても、やはり長時間労働が続きすぎのような気がします。
 やはり、使用者側としては、
原告さんに原因があるというだけで、そのような状態を長期間放置するのではなく、 
何らかの「積極的」なサポートを行って、現実に長時間労働を解消させるか、
さもなくば早々に店長から降格させた方が良かったのかなぁ、と。


●最後に、三つ目のメルクマール、③待遇の点ですね。

 このメルクマールについて、特に注目されているポイントとしては、
すぐ下の非管理職との間で、待遇の逆転現象が起きている点ですかね。
 つまり、S、A、B、Cの4段階評価で定まる成果主義賃金体系の下で、
C評価の店長さんは、非管理職よりも低い待遇しか受けられていない、と。
 
 ただですね、
この東京地裁判決が、一切の逆転現象を許さない、とまで言ったのか?と問われれば、
いやぁ、そこまでは読み取れないんじゃないかな、と。

 この東京地裁判決ってのは、
全体の10%を占めるC評価店長と非管理職との間で逆転現象があるという点のほか、
全体の40%を占めるB評価店長と非管理職との間で待遇に大差がない点も問題にしてます。
 つまり、店長全体の50%と非管理職との間で待遇に大差がないか、むしろ逆転がある、と。

 それから、この東京地裁判決はね、
店長と非管理職との間の、時間外労働の平均時間数も比較しているわけです。
 そして、店長の方が平均時間数も多いじゃないか、と。

 で、そのように平均でも店長の方が多く働いているのにね、
店長全体の50%は非管理職よりも余り優遇されていないか、むしろ冷遇されている、と、
そういう全体を見てアウトだよ、と、
つまり、管理監督者としてふさわしい待遇は受けてないじゃない、と、
そう言っているように読めるんですね。

 だから、この東京地裁判決から、
逆転現象は一切許されないとまでは、直ちに導くことはできないだろうなぁ、と。
 ただ、制度設計としては、逆転現象は避けるべきでしょうね。

 ちなみに、このメルクマールで本来的に問題とされるべきなのは、
当該原告個人さんの待遇なんだと思いますが、
この東京地裁判決は、店長一般の待遇を問題にしてますね。
 ここは学者の方からも批判されてますが、かなり珍しい判断方法だと思います。 

 ただ、結論として、私は、この判断方法で良いと思います。
 なぜなら、店長さんについては、先のとおり、成果主義賃金体系が採用されており、
ある一時点での当該原告個人さんの待遇を問題とするのでは、
その待遇の実態を反映していないことになるからです。

 その他、成果主義が絶対評価or相対評価で議論が変わるかという問題もありますが、
まぁ、絶対評価は賃金原資の問題からしても余り採用されていないと思うのでパス(笑)。
 

●以上が私の簡単な分析です。
 さて、これを読んだ企業の方は、こう思ったかもしれません。

 「使用者側弁護士は結構マック判決を批判してたけど、
  やっぱり、うちもヤバいのかな。」

 そう、ヤバいと思います(笑)。  
 
 いい加減、そろそろ、管理監督者扱いは諦めて、
・割増賃金のみなし額を予め役職手当に埋め込んだり、
・(できるなら)企画業務型裁量労働制を採用したりなど、
現行法で可能な限りの対策を打っておきましょう。
 
 後は、時間管理ですね。
 「最近の奴らは軟弱だから?」という労働のツボでも書きましたが、
健康管理の観点からも、時間外労働の管理は慎重に。


●さて、これで本日のツボは、おしまい。
 あぁ、ホントは、2、3か月前に書こうと思ったテーマなんだけどな・・・。

 次回は、引き続き、労働のツボで、偽装請負絡みを。これもホントは数か月前に。。。


(2008年8月30日記)
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