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●企業価値研究会が出した買収防衛策に関する最新の報告書について、少し雑感を。


●既にご存じの方が多いかと思われますが、
6月30日に、経産省内の企業価値研究会(企価研)から新たな報告書が出ましたね。
 その名も、「近侍の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」(買収防衛報告書)。

 ただ、これまた既にご存じの方も多いかと思われますが、
どうも、この新たな報告書、実務家を中心として余り評判が芳しくないようですね。。。

 私は、当時、ちょっとテンパり気味だったので、、これを読むのが少し遅れていたところ、
先に読んだ周りの反応を見ていて、最初はね、
企価研メンバーに対する、ある種の「やっかみ」かな?、とも思ってたのですが、
次第に、どうも「それだけ」ではなさそうだな、と(笑)。 

 ということで、本日のツボでは、
そんな買収防衛報告書について、少し雑感を述べておきたいと思います。


●で、まずなんですけど、
どうも「やっかみ」を含めて色々と罵詈雑言も飛んでいるテーマなようなので、、、
前提として、私の立場を簡潔に示しておきますと、以下のとおり。

 ①企価研が経産省内にあることや企価研の活動それ自体が特におかしいとは思いません。

 ②買収防衛報告書に記載されている内容それ自体に特に異論があるわけでもないです。

 ③買収防衛報告書がブルドック事件最高裁判決の内容を否定したとも思いません。 
 
 ④少なくとも一般の「ロースクール生」が書けそうな内容でもない気がします。
  あ、これは、どうでもいいかな・・・(笑)。
  

●さて、前置きが長くなってしまいましたが、
以上を前提にしつつ、少し雑感を述べさせていただきますと、
まず、最初の正直な感想としては、おそらくは多くの方と同様、

 「何か抽象的な議論が多いなぁ」、と。

 先の前提にも書いたとおり、
買収防衛報告書に記載されている内容それ自体に特に異論はありませんが、
それはあくまで、その内容が当たり障りのない抽象論にとどまっているからであって、
おそらくは多くの実務家からしますとね、

 「そんなことは皆わかってるんであって、
  問題は、立証方法等を含めた『実務への落とし込み』なんだけどなぁ。
  何で、このタイミングで、しかも、このような抽象的な内容なのかな?」

 そうツッコミを入れたくなっちゃうわけですよね。

 どうせ研究会を設置して検討報告するというのなら、
既に上場会社のうち500社以上が買収防衛策を導入しているわけですから、
裁判例のみならず、もっと各種導入事例の分析を含めて、
具体的な買収防衛策の内容に関する突っ込んだ検討報告がなされて然るべきかな、と、
他の分野に関する経産省さんの報告書などに照らしても、
それを行う能力を経産省さんは十分に持ってるはずなんですけどね。。。

 ちなみに、そのような各種導入事例の分析などが、
企価研の実務家メンバーにコンフリクトを生じさせるというのなら、
実務家メンバーを除外して、学者さんと事務局さんだけででも行ったら良いのでは?


●それから、次に、
この買収防衛報告書の位置づけに関してなんですが、
その記載からも明らかですし、また、座長さんも某大新聞で言っておられましたが、
一応は、「政策提言」という位置づけになってますよね。

 で、確かに、この買収防衛報告書を読むとね、
「政策提言」という位置づけにふさわしく、
「■■すべき」という「べき論」が頻繁に展開されているわけです。

 ただ、この買収防衛報告書の現物を読めばお分かりになるかと思いますが、
そのような「べき論」でなく書かれている点、
しかも、他の部分と異なって、具体的に、かつ、言い切りの形で書かれている点、
それが少なくとも一箇所ありますよね。
 
 どこかというと、金銭補償は不要だという記述です(10頁と14頁)。

 何度も言うとおり、
私は、この買収防衛報告書の内容それ自体には特に異論ないのであって、
先の記述それ自体にも賛成ではあるのですが、
「政策提言」という位置づけの中で、
とりわけ何か違和感ある記述だなぁ、と思いました。

 で、何が言いたいかと言うとね、
いや、結局、この買収防衛報告書ってのは、
「政策提言」という位置づけで、色々と他にも書いてはおりますが、
その全体をよくよく読んでみると、結局は、
多くの場面で金銭補償は不要だ、と、
それを強調することに主眼があったのかなぁ、という気がしてならないんですね。

 で、もしそれが正しいんだとすればね、
この「わかりにくさ」って言うんでしょうか、
「政策提言」という「衣」の下での「大人の本音」(?)といいますか、
そこらへんが、この買収防衛報告書を「キナ臭く」感じさせる一因なのかな、と。
 さらに言うと、
敢えて「政策提言」なんていう位置づけの下でやらずに、真正面からね、
ブルドック事件最高裁判決は、金銭補償が常に必要なんて言ってないよ、と、
そういう裁判例分析の報告書を作れば良かったんじゃないのかな?、と、
そういう気がしてならないんですよね。


●最後に、もう一言、言わせていただければ、

 「今後の展望はあるのかな?」 

 というのも、先に述べたように、
もう主たる問題はね、「実務への落とし込み」の点にあるわけですよ。
 
 現状のまま、
これ以上は余りハード・ローの活用を考えずに、
あくまでもソフト・ローを基調としてね、
買収防衛策を律していくということに拘るのであれば、
これ以上、抽象的な議論をしても仕方ないんであって、
「実務への落とし込み」をどう図っていくのか?という点を、
もっと突っ込んで具体的に検討報告してもらわないといけないはずなんですよね。

 この点、「個別事例の集積を待つべき」という議論もあるようですが、
十数年前ならいざ知らず、昨今の市場環境の下では、
個別事例が集積する前に、日本市場が沈没する可能性だってあるように思うのですが。
 「市場破れてルールあり」では仕方ないですしね。
 現に、ブルドック事件最高裁判決が出た直後からの日本市場の動きは、
サブプライム問題だけでは到底説明し切れるものではないようにも聞いてますし。

 企価研メンバーを始めとして、
今の買収防衛策の議論に関して声の大きい方は、
殆どがソフト・ロー重視派のようですが、
それも一つの方向なので、それならそれで結構なんですが、
少なくとも「実務への落とし込み」を含めた今後の展望を示すべきではないかな、と。

 そうでないと、
実務の現場での動揺や混乱は収まらないし、
市場の信認も得られないと思うんですよね。

 今回の買収防衛報告書に関して、それなりに批判が根強いのは、
もちろん、「別の意図」によるものもあるのでしょうが、
上記のように今後の展望が見えないからのようにも思えてなりません。
 この点は、言い換えれば、
企価研に対する期待の大きさの裏返しということでもありましょう。


●本日のツボは、これでおしまい。

 ちなみに、私は、「よそ者を見たら泥棒と思え?」でも書いたように、
ソフト・ロー重視派に対しては、少し懐疑的な立場を採っております。
 特に日本では、米国と異なって、
取締役を始めとする経営陣の転職市場は未だ閉ざされた状態にありますので、
その意味でも、自己保身へのインセンティブは強くならざるを得ないように思われます。
 このようなインセンティブを、
少なくとも「政策提言」やソフト・ローのみで、
正しい方向に修正できるとはなかなか思えないわけでして、
濫用防止策も「仏作って魂入れず」になる可能性が相当程度残るのでは?、と。
 ですので、そのようなインセンティブを適切に修正するには、
やはりハード・ローを活用すべきではないかな、と、
そして、少なくとも「時間の確保」という買収防衛策の一側面については、
ハード・ローによるサポートを迅速に実現できるし、そうすべきであろうと思ってます。

 従前、「裁判所は万能ではない?」の編集後記でも書きましたが、
世界の資本の目から見れば、
日本市場など、数ある市場のうちの一つにすぎません。
 世界の資本にパッシングされてしまうことのデメリットを、
今一度、改めて肝に銘じるべきではないでしょうか。


(2008年9月2日記)
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