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●近時における立法のスピードアップ化について、一言二言。


●最近、企業法制を中心として、
十数年前とは比べ物にならないスピードで、
大規模な改正を含めた立法がドンドン進んでおりますよね。

 これは、とりもなおさず、
「ドッグイヤー」または「マウスイヤー」とも評される、
凄まじいまでの世の中の動きのスピードを前にして、
従前のように念には念を重ねるが如き立法審議をしていたのでは、
世の中の動きに乗り遅れてしまう、という、
立法担当者の方々の危機感の表れなのしょうかね。


●さて、そういうスピードアップ化した立法を前にして、
どうも最近、私の頭の中でグルグルと回っている不満があるんですが、
それはですね、敢えて一言で言ってしまえば、

 「お約束違反じゃないかな?」、と。


●何が言いたいかと言うとね、
立法をスピードアップ化することそれ自体は、
一つの方向として、あり得る選択だと思いますので、
それ自体がどうこうというわけではないんですが、
そのような選択を行うに際しては、一つ、「お約束」があるはずなんですよね。

 少し詳しく言っちゃうと、
そもそも立法という行為それ自体、
どこまで言っても「人間」という不完全な存在の営みである以上、
全ての事態を事前に想定できるわけでもなく、ミスをゼロにできるわけでもない。
 だから、どうしても「悪法」ができちゃう可能性は残っちゃうわけですよね。

 そして、そのような可能性は、
特に立法をスピードアップ化すればするほど高まってしまうのは自明であって、
そうであるからこそ、
立法をスピードアップ化するのであれば、それと「不可分のセット」として、
当該立法に伴う「悪法」部分の見直しもスピードアップ化しなければならないはずなんです。

 でも、近時の立法を見ていると、
そういう「不可分のセット」であるはずの、
「悪法」部分の見直しのスピードアップ化がなされてなくない?、と。

 つまり、
立法のスピードアップ化に伴う「お約束」が、
今のところ、果たされてないのでは?、と。


●そのような例の最たるものは、
株主名簿閲覧請求の拒絶事由の一つである、いわゆる競業事由を定めた、
会社法125条3項3号でしょう。

 念のために、当該条文の内容をザックリと説明しておくと、
会社に対して株主名簿を見たいと言ってきた株主等がね、
会社と競合するビジネスに関与しているような場合には、
会社は、その株主等に対して株主名簿を見せないことができる、と、
そのように定めた条文です。
 その条文の内容それ自体は、非常にわかりやすいですね。

 ただ、この条文については、今年の6月12日、
東京高裁が、日本ハウズイング事件に関して、
条文解釈を大きく逸脱したかのようにも見える判決を出しましたよね。

 既に様々なブログで紹介されているので、ご存じの方も多いかと思いますが、
この判決が何と言ったかというと、
株主名簿を見たいと言ってきた株主が、
たとえ会社と競合するビジネスに関与している場合であってもですね、
あくまで株主としての権利の確保または行使に関する調査の目的の下に、
当該会社の株主名簿を見る必要があるということで、それを見たいと申し出たんだ、と、
そのような事情を当該株主が立証することができれば、
会社は、その株主に対して、株主名簿を見せなきゃならん、と。

 つまり、
本来的には、会社側で、請求を拒絶する理由があることを立証しなきゃならんのですが、
この会社法125条3項3号という条文は、
請求者が会社と競業するビジネスに関与しているような場合には、
請求者側で、当該請求が拒絶されるべき理由はないことを立証しろ、と、
そのように立証責任の転換を定めた規定なんだ、と、
そういう判断ですよね。

 で、問題は、
何で東京高裁のベテラン裁判官達が敢えてね、
こんな条文解釈を大きく逸脱するかのような判断を行ったのか、ということなんですが、 
それは言うまでもなく、
この条文に書いてあるとおりに、会社の請求拒絶を認めてしまうと、
競業ビジネスに関与していれば、もう株主名簿を一切見れなくなる可能性がある、と、
余りにも不合理な結論になってしまうからですよね。

 そういう意味で、この東京高裁の判断は、概ね好感を持って迎えられてるようですが、
そもそも論としてね、従前からずっと言われ続けているように、
やっぱ法律自体がおかしいはずなんですよね。
 それは、東京高裁の解釈に依ったとしても同様であって、
単にその会社の株主状況が知りたいというだけなのに、
何で、競業ビジネスに関与しているというだけで、
原則拒絶、立証責任転換という憂き目にあわなきゃならんのか?、と、
そのような扱いの合理的な理由が何なのか、全く不明なんですよね。
 以前、この条文に関する議論を傍らで見ておりましたが、
この条文を擁護する方のご発言の内容が、
少なくとも私には、全くと言っていいほど意味不明でした。
 
 ちなみに、どうも、立法経緯を仄聞する限りでは、
旧商法上の会計帳簿に関する閲覧請求の拒否事由を、
単純にそのまま「コピペ」しただけ、というのが実態のようであるようにも。。。

 結果として、「悪法」を絵に描いたようなものになっている気がしてなりません。
 しかも、見直される気配は、未だに全く感じられないという始末。


●他にも、TOBルールの全部買付義務に関して、
買付者が行使できないストックオプションまで全部買付義務の対象になってしまっており、
現在のTOB実務では、しょうがないので、一応「買付け」ようとはした、と整えるべく、
「1円」という価格のオファーをわざわざ行っておりますよね・・・。

 この問題について、
全部買付義務を含めた法改正の施行直前に所轄官庁に問い合わせたら、、
担当者の方が、その結論に驚いてたとか。。。

 でも、これも未だに見直される気配は全くありませんね。


●ちなみに、
以上のような議論に対する反論の一つとして、
「法的安定性」というものが持ち出されることがありますが、
上記のような「悪法」に関して「法的安定性」も何もないだろう、と、
「悪法」が安定しちゃってどうすんだよ、と、
個人的には本気でそう思ってますが。


●本日のツボは、これでおしまい。
 
 珍しく勤勉にアップを続けてみました(笑)。


(2008年9月3日記)
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