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●08年12月施行予定の課徴金制度との関係で緊張感の漂う、大量保有報告について。


●敢えて説明要らないかもしれませんが、
念のために大量保有報告制度ってのを、凄くザックリと説明すると、
上場会社の発行する株式等を5%以上保有しちゃったような場合に、
所轄財務局長に対して、5営業日以内に、一定事項を報告せよ、と、
まぁ、そういうものですね。

 で、この大量保有報告についてね、
08年12月上旬(施行日未定)から、
その不提出や虚偽記載等について、
課徴金が「常に」課せられることになります。

 この点、
特に、ここで言う「不提出」には、
どうも「数日の提出遅延」も含まれると解さざるを得ないようです。
 とするとね、
従前は、事実上、所轄財務局に対する「ごめんなさい」で済んでたものが、
今後は、「常に」課徴金の対象になる、と。

 しかも、また、
その課徴金の金額がね、
保有する株式等の発行者の時価総額に対して10万分の1という、
結構、無視し得ない金額なんですよね。
 なので、
特に某自動車会社さんとか、時価総額の高い会社の発行する株式等をね、
大量に取得する予定がある場合などは、要注意です。
 あぁ、考えただけでも背筋が凍りそう・・・(笑)。

 さて、本日のツボでは、
そんな背筋の凍りそうな大量保有報告について、
実務上よく問題になる点を幾つか、
徒然なるままに述べていきたいと思います。


●まず、報告対象となる有価証券の範囲について。

 どうも法務部の方などの中には、

 「上場されている株式を取得する場合だけが問題ですよね」、と、

そのような認識を持たれている方もおられるようですが、

 「いや、それは不正確ですよ」、と。

 条文上はね、ザックリと言うと、
上場されている株式等の発行者が発行している株式等、と、
そのように回りくどく規定されているんです。

 これは何を言いたいかというとね、
まず、ある会社(A)の発行する普通株式が上場されてます、と。

 で、その普通株式が報告対象となる有価証券に該当することは良いですね。
 これは、上記認識の範疇です。
 
 でも、条文上は、それだけではないんですね。
 上場株式を発行しているAさんが、別途発行している新株予約権とかも、
報告対象となる有価証券に該当するんですよ、と。
 その新株予約権それ自体が、上場されているか否かにかかわらずね。 


●次に、保有割合の計算方法について。

 本ブログの性格上(笑)、
細かい計算式や「保有(者)」などの説明は省きますが(金商法27条の13等参照)、
特に注意してもらいたいのは、
自分だけの保有分で計算するんじゃないですよ、ということ。
 何が言いたいかというと、
「共同保有者」の分も合わせて計算されるということです。
 
 「凄くプリミティブなアドバイスだなぁ」、と、

そのように思われるかもしれませんが(笑)、
実務上、具体的な場面で、少なからず失念されてます。。。
 
 例えば、ある会社(B)が、ある上場会社(T)に対して、TOBをかけました、と。
 その結果、Bさんは、Tさんの発行する株式を50%超保有することになりました、と。
   
 このような場合、まずBさんは、
大量保有報告又は変更報告を行うことになるでしょう。
 で、その時に注意するのは、
BさんとTさんとの間には、50%超の資本関係(厳密には議決権計算)が認められるので、
以後、Tさんは、Bさんの「共同保有者」と扱われることになります、と。
 なので、
Bさんの保有割合は、
Tさんの保有する株式等(つまり自己株式とか)を含めて計算される、と。
 ここまでは、まぁ、常識かな、と。

 で、ともすると忘れがちなのは、
Tさんからみても、Bさんが「共同保有者」に該当するということ。
 つまり、Tさんの保有割合は、
Bさんの保有する株式等を含めて計算されるんですよ、と。
 で、通常ね、Tさんは、自己株式として、
全体の5%以上も保有してることはないんでしょうけど、
それだけで、大量保有報告とは無縁だね、と、
そのように安心しちゃダメなわけで、
Bさんの保有する株式等を含めて計算されれば、
軽く5%超えちゃいますよね、と。
 だから、上記の場合、
Tさんも、大量保有報告の提出義務があるんですよ、と。

 で、実務上はね、上記のような場合、
Bさんが、Tさんから委任状をもらって、
Bさんの方で、Tさんのも含めて一括して、大量保有報告を出すのが通常の処理。
 でも、
Bさんに、まともなアドバイザーが付いてないと、
すっかり忘れられてる場合もあるので、、要注意!

 ちなみに言うと、
冒頭に述べた課徴金制度との関係で、
このような一括提出方式を、実務上避けた方が良いのでは?、と、
そういう意見も無くはないように聞いてますが、
いやいや、そんなこと言いだすと、実務上、混乱が起きかねないと思います。。。
 是非とも冷静な対応をね、お願いしたいところです。


●お次は、「共同保有者」の範囲について。

 この「共同保有者」については、
上で述べたような、50%超の資本関係がある場合のように、
ある意味、形式的な基準で判断できる者(金商法27条の23第6項等参照)と、
そうではなくて、実質的な基準で判断される者(金商法27条の23第5項)、
この2つに分かれてますね。

 で、実務上その範囲について少なからず問題となるのは、やはり後者でして、
その中でも、特に問題となるのは、

 共同して株式等を取得又は譲渡することを合意している他の保有者、と、

そういう類型の方ですね。

 例えば、株主間契約で少なからず入ってくるドラッグ・アロング条項。
 これはね、
ある契約当事者(X)が、その保有する株式を第三者(T)に譲渡する場合に、
「一定の発動条件」を満たすと、他の契約当事者(Y)に対しても、

 「お前(Y)の持ってる株式も、俺(X)と一緒に、Tさんに売れ」、と、

そのように要求できるような権利を規定する条項です。

 このような条項、特にそれが発動された場合の状況を見てみると、
XさんとYさんとの間で、「共同して株式等を譲渡することを合意している」のでは?、と。

 で、そうするとね、
上場会社の株主の間で、
ドラッグ・アロング条項の入った契約を締結すると、
お互いに「共同保有者」の関係になっちゃいますね、と。
 まぁ、保守的に解釈すれば、そうなるんでしょう。

 ただ、
これまでの実務では、
そのような保守的な解釈が必ずしも採られていない例もあるようでして、
ドラッグ・アロング条項に係る「一定の発動条件」の内容如何によっては、
「共同保有者」の関係にまで至ってはいないんだ、と、
そのような整理をしてしまっている例もあるように聞いてます。

 でもね、
今後は、冒頭に述べた課徴金制度との関係を考えると、
保守的な解釈に立脚して実務を回していかざるを得ないように思われるので、
「共同保有者」の関係に立つことが嫌なら、
ドラッグ・アロング条項などを契約に盛り込むことは避けるべきでしょうね。


●その次は、開示内容について。

 この点、特に問題となるのは、以下の2つ。

 ①「保有目的」
 ②「重要な契約」

 まず、上記①の点については、
特に今後の予定を、どこまで開示すべきなのか?、と。

 この点、記載上の注意ではね、

 「できる限り具体的に記載すること」、と、

そんな極めて不親切な記載がなされてるだけ(笑)。

 で、例えば、よく問題となるのが、今後TOBを予定しているような場合。
 でも、「今後TOBをやりますよ」なんて、通常は開示できないですよね。
 なので、「どうしたら良いの?」、と。

 で、最も保守的な見解によれば、「いきなりTOBやれ」、と。  
 ただ、さすがに、それはねぇ、、、ということで、
実務上は、TOBについての機関決定が未だ行われてないなら、
やはり開示までは不要じゃないのかな、と、
そういう整理で回してる例が少なくないようですね。
 今後は、課徴金制度との関係で若干悩ましいところですが、
個人的な感覚としては、今後もね、
機関決定ない限り開示不要という整理で回していくのかな、と。
 
 次に、上記②の点については、
どのような契約を、どのくらいの内容まで開示すべきなのか?、と。

 まず、「どのような契約」という点ですが、
これは記載上の注意としてね、
 
 保有株式等に関する、
 「貸借契約、担保契約、売戻し契約、売り予約その他の重要な契約又は取り決め」、と、

そのような記載があるわけですが、いまいち良くわからん、と。
 金融庁などに聞いても

 「当事者で判断してください」、と、

そんな無責任な回答しか返ってきません(笑)。

 で、個人的にはね、
保有株式等に係る権利が第三者に移転する可能性を示すような契約なら要注意、と、
そんな実務上の感覚は一応持ってます。
 もちろん、最後はケースバイケース(笑)。

 次に、開示すべき契約が見つかったとして、その内容をどれくらいまで開示すべきか。   

 とりあえずはね、記載上の注意で、具体例として挙げてある、

 「契約の種類、契約の相手方、契約の対象となっている株券等の数量」

これらは必ず開示する必要はありますね、と。
 問題は、その先、どれくらいまで開示すべきか?、と。
  
 これも個人的な感覚としてですが、
保有株式等に係る権利が第三者に移転する際の条件が規定されているなら、
そのような条件は、なるべく開示しておくべきでしょうね、と。

 で、従前の実務ではね、
そのような条件のうち、原則的な条件のみを規定して、例外となる但書的な条件は省く、と、
そういう対応が少なくなかったような肌身感覚を持ってます。
 ただ、これもね、
今後の課徴金制度との関係では、
そのような但書き的な条件を含めて、なるべく当該条件の全体像を開示する方向に、
どうしても流れていかざるを得ないかな、と、
そんな感覚を持ってます。

 以上が、開示内容についての各論的なお話ですが、
あくまで個人的な感覚ではあるものの、総論的なお話をしておくとね、
09年1月施行予定の株券電子化との関係でいうと、
株券電子化後は、特に発行会社において、
それぞれの株主の持株数などを比較的容易かつ機動的に把握できることとなるようです。
 総株主通知等の請求における「正当な理由」についての解釈指針とかによるとね。
 そうすると、特に発行会社との関係だけで言えば、
大量保有報告の存在意義として、
持株数以外の情報(それこそ「重要な契約」の項目とかね)、
そこに焦点が当たってくる可能性がありそうかな、と。
 でね、そうすると、
これまでのように、持株数以外の情報についての「なぁなぁ」な開示では、
後から「刺される」可能性が高まってくるのではないかな、と。


●本日のツボは、ここまで。

 ちなみに、冒頭に述べた課徴金制度の最大の問題点は、
法違反があれば「常に」課徴金が課せられる、ということ。
 この点、刑事罰であればね、
いわゆる起訴便宜主義というのがあって、
検察官において、事案の実情に応じて不起訴という対応もあるわけですが、
そのような形での課徴金を課すかどうかについての裁量が、行政にないんですね。
 なので、小松製作所さんのインサイダー事件のような、かなり不憫な例でも、
一律に課徴金が課せられてしまうわけです。

 このような裁量権を行政に与えなかったことについては、
法執行の平等性の確保という感じの説明があるのかもしれません。
 ただ、余りにも硬直的すぎるかな、という気がします。
 特に「不提出」について「1日の提出遅延」まで含められたり(文言解釈ではそのよう)、
「虚偽記載」等について広めの解釈なり予測可能性の乏しい解釈が採られたりするのなら、
自主申告による半額減免の制度はあるにしても、
大量保有報告に対する実務側での恐怖感は並々ならぬトコロまで行っちゃいそう。

 で、そんな状況を放置するようでは、
大量保有報告を回避する形での投資が従前よりも更に増えることにならないのか、と。

 「そろそろ5%っぽいから、お腹いっぱい」、と、

そんな形で投資を委縮させることにならないのかな、と、
まぁ、杞憂なのかもしれませんが、
個人的に心配したりしてる今日この頃です。


(2008年11月30日記)
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