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●本日のツボは、何故か、なかなか明示的に語られないドグマ的なものについて。


●「スクイーズアウト」

 この横文字(死語?)は、
M&Aに興味のある人であれば、
おそらくは一度は耳にしたことのある言葉ですよね。

 日本語にすると、
おそらくは「少数株主の排除」とか、
そういう言い方になりますでしょうか。

 今では、その実務手法もかなり確立した感がありますが、
一時は、その手法のあり方などをめぐって、
M&Aに携わる実務家同士、色々と熱い議論を戦わしたことも多々あったような記憶。

 本日のツボは、そのような「スクイーズアウト」に関連して、
何故か、なかなか明示的に語られないドグマ的なものについて。


●さて、
単に「スクイーズアウト」といった場合、
そこには2種類の意味を含み得るんですよね。
 
 その一つは、いわゆる「キャッシュアウト」と呼ばれるもので、
例えば全部取得条項付種類株式を使用した手法により、
対象会社の少数株主が持つ株式の代わりに現金を渡すことで、
対象会社から少数株主を追い出すというものですね。

 もう一つは、余りカッコいい言い方はないようなのですが、
例えば通常の株式交換などの手法により、
対象会社の少数株主が持つ株式の代わりに別の株式を渡すことで、
対象会社から少数株主を追い出すというものです。


●でね、
敢えて言うまでもないかもしれませんが、
一般に「スクイーズアウト」という名の下で、
少数株主の保護が熱く論じられているのは、
前者のキャッシュアウトの手法によるものであって、
必ずしも後者の手法ではないのですよね。

 例えば、
株価算定における有意な取引事例を創出すべく、
まずはTOBを前置しましょうね、と、
その結果、買付者の仕上がりの持株比率が9割に達してますか、と、
仮に9割に達してないなら、株主総会の特別決議が通ったとしても
そのTOB価格を基準としたスクイーズアウトの対価って、
必ずしも公正なものとは言えないかもよ?、と
そのような、かの名高い(悪名高い?)「90%ルール」が論じられているのも、
あくまでキャッシュアウトの手法による場合だけなんですよね。

 言い換えると、
後者の手法のようにスクイーズアウトの対価として株式を交付する場合、
特に、三角でないプレーンな株式交換(株式交換親会社の株式を交付するもの)の場合、
敢えてTOBを前置しなきゃいかんよ、とか、
特別決議が通るだけではなくて「90%ルール」の適用がある、とか、
別に、そういうことは議論されてこなかったんですよねぇ。
 

●このような議論の違いってのは、
さて、どこから出てくるのか?、と。

 決して何も説明がないわけではないのですよね。

 皆さんもどこかで聞いたことがあるかもしれませんが、
一般的な説明としては、以下のような感じですかね。

 キャッシュアウトの場合には、
株式が対価とされる場合と違って、
少数株主と対象会社との関係は完全に切れてしまう、と。
 つまり、今後、対象会社において、
各種シナジー効果などによる企業価値の向上が生じるとしても、
少数株主は、それを享受することができない、と。

 他方で、例えばプレーンな株式交換の場合には、
代わりに親会社株式をもらえるので、間接的ながらも対象会社との関係は続き、
株式交換によるシナジー効果等も、親会社株式を通じて享受できるじゃないか、と。
 
 なので、キャッシュアウトの場合の方が、
より少数株主の保護の必要性が高いのだ、と。

 うん、何となく説得的な気もする。
 当初は私もそれで納得しようとしてた。  


●でもね、よーく考えてみるとね、
そこで議論されている、プレーンな株式交換の場合における親会社さんって、
限りなく無菌室状態の会社というか、
誤解を恐れずに言えばSPCのような空箱に近いイメージが想定されてるような気がするのですよねぇ。
(もちろん、SPCだとシナジーって?という感じもあるのですが)

 実際の株式交換親会社ってのは、
自分で色々と事業をやってたり、
仮に持株会社だったとしても対象会社以外にも他の事業会社が複数ぶら下がってたり、と、
そして、その中にはシナジーとは全く関係なさそうな事業も少なくない、と、
そういう、あくまで生臭い会社なんですよね。
 もっと言うと、その親会社自体が強いノイズを発している、と。

 そうだとするとね、
その親会社の発行する株式を渡されても、その株式を通じて、
対象会社におけるシナジー効果等による企業価値向上を享受できるって、
それってホントに実際そうなのかなぁ、と。
 
 特に対象会社の企業価値を真面目に評価して株式を買っていた人からすると、
企業価値を構成する変数が大きく異なり得る親会社株式を渡されるよりは、
「90%ルール」などの手続的保障を前提として算定された現金を交付される方が、
まだよっぽどマシなんじゃないかな、と。
 そんな自分が投資対象として想定していなかったような別の株式を渡されても困るよ、と。
 
 現に、私のところにすら、そういう声が少なからず聞こえてくるのですよねぇ。
 

●そういう状況であるにもかかわらず、今のところ、
そのようなキャッシュアウトの手法とそれ以外の手法との間における、
少数株主保護に関する議論の不均衡について、
何故か明示的に語られることがないのですよねぇ。

 仮に誰かが語ってたとしても、余りに声が小さいのか、殆ど存在感が無いに等しい状況。

 その一つの原因は、おそらく、

 「だって、昔から、株式交換ってのは、そういうものだったじゃん」、と。

 つまり、旧商法時代に株式交換が導入されて以降、
当時は別に「90%ルール」なんて議論されてなかったし、
立法で特別決議が通りさえすればOKってしたんだし、と。
 ただ、キャッシュアウトだけは、会社法が制定されるまで、
産活法を除いて、法律が正面から認めてなかったわけで、
だから色々と少数株主保護に関する議論も蓄積されてきてたので、
会社法によって特別決議で現金対価の組織再編が可能とされた後でも、
そのような歴史的経緯を引きずって、なお「90%ルール」などが論じられてる、と。
 
 そのような歴史的経緯の影響を受けたドグマがこびりついてるのかなぁ、と。

 それか、そのようなドグマを「ドグマ」として認識しつつも、
一度、キャッシュアウトの手法とそれ以外の手法との間の不均衡を語りだすと、
現在の、キャッシュアウトよりは比較的緩やかな株式交換の実務が揺らぐ可能性があるので、
なら敢えて語らない方がいいんじゃないかとの判断があるのか…。

 ちなみにですが、
私が問題にしてるのはあくまで議論の不均衡それ自体であって、
別に「90%ルール」がいいとか、それに揃えろとか、そういうことではないですよ。
 私は、「出しゃばるな?」というM&Aのツボにも書いたように、
むしろ「90%ルール」には批判的な立場ですね。
 

●本日のツボは、ここまで。

 特にM&Aに関連する法理については、
それに精通する実務家とそうでない実務家が比較的明確に分かれてきている中で、
前者の実務家が敢えて語りたがらい問題というのがまだ残っているような気もします。
 そのような問題を社会に見える形でえぐり出す役割を担う者として、
例えば年金基金さんや学者さんなどが一応思いつくわけですが、
日本だと何故だか年金基金さんは随分とおとなしいですし、
最近の学者さんはどちらかというと解釈論より立法論がお好きのようにも…。


(2011年3月10日記)
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