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●最近、異常に件数が増えてきてますね、公開買付け(TOB)。


●「公開買付け」、
この言葉は、つい最近まで、
企業法務をやっている弁護士にとっては、
何となく憧れの気持ちとともに発せられたものでした(笑)。

 といいますのも、この公開買付け、
1990年代前半までは、年間でひと桁あるかないか、
1990年代後半でも、件数が増えてきたといっても年間20件もいかない、
2000年代前半に至って、ようやく年間30件前後になった、
そんな状況だったのです。
 だから希少価値が高かったのですね。

 ところが、最近はさらに増加傾向にあり、
2006年における公開買付けの実績件数は68件でした。
 だいたい5日に1回ぐらいの割合で、新たに公開買付けが開始している、
そういう計算になりますよね。
 また、昨年(2007年)の実績件数は、まだ入手できていないのですが、
おそらくは2006年よりも増加しているであろうとの話です。
 新聞を読んでいても、ほぼ毎日のように、
「公開買付け」または「TOB」という言葉が出てきますよね。

 企業法務をやっている弁護士の中でも、
「公開買付けはもう食傷気味です」って方も最近はいるようです(笑)。


●さてさて、そんな公開買付けではありますが、
実は、よくよく詰めて考えてみると、
「う~ん、よくわからんなぁ・・・」ってところが結構あるんですね。

 本日のツボとしてお話する、
「買付け価格の均一性」に関する規制の問題も、
まさしく、そんな場面のひとつなんです。


●まずは、この「買付け価格の均一性」に関する規制、
一体、どういう規制なのか、という点をおさらいしておきましょう。

 話をややこしくしないために、
普通株式のみを対象とし、金銭を対価として、
特に買付け数の上限・下限を設けずに公開買付けを行う場面を想定してください。

 その場面で、公開買付けを行う方は、
公開買付けに応募した株主皆さんについて、
その保有する普通株式を同じ(均一の)価格で買い取ってあげてくださいね、と。
 これが「買付け価格の均一性」に関する規制の概要です(金商法27条の2第3項など)。


●で、その規制の概要だけを見ると、

 「すっごくシンプルじゃない?」と。

 えぇ、そうですね、確かに(笑)。

 ただ、実際の公開買付けの場面で、
この規制の適用を考えようとすると、けっこう難しいんですね。

 例えば、今、Aさんが、X社の普通株式を持っているとします。
 他方、Bさんは、金銭を対価として、
X社の普通株式の全部を取得する目的で、公開買付けを始めようとしています、と。
 ここで、AさんとBさんが、
Bさんの公開買付けが成功した暁には、X社の事業の一部をAさんに譲渡します、と、
そんな合意を公開買付け前にしたとしましょう。
 
 この場面で、公開買付けの対価として支払われる金銭が、
Aさんを含めX社の株主皆さんに対して同じだとすれば、
「買付け価格の均一性」に関する規制は問題なくクリアしているようにも見えますね。

 でも、この場面で、例えばですよ、
公開買付け後に予定されている事業譲渡の価格が通常よりも低く設定されていた場合、
言い換えれば、その事業譲渡の価格が公正価格よりも低く設定されていた場合、
これ、どうでしょうかね?

 そのような場合、
公開買付けと事業譲渡を一体として見た上で、その経済的な実体に着目すると、
Aさんだけ、他の株主よりも高い価格で株式を買ってもらっているようにも見えるんですね。

 で、これは「買付け価格の均一性」に関する規制に違反しないんですか?、と。
 
 特に「公正価格って何よ?」っていう根本的な疑問があるもんですから、
MBOを含めて色々なところで、けっこう問題になりうるんですね。


●この問題は、言いかえれば、
公開買付けに関連しうる取引のどこまでを見て「均一性」を判断するのか?
という問題なんです。

 先ほどの場面で、例えば、
事業譲渡が、公開買付けの後3年経ってから実行するというものだったら、
どうなんでしょうね?

 その間に3年も経ってるんだから、
公開買付けと事業譲渡を一体として見て、「均一性」を判断するのはおかしい、と、
そういう主張もあるかもしれません。

 でも、結局は出来レースでしょ?、と、
じゃぁ、何年かおけば、いくらでも規制を回避できるの?、と、
そういう反論は当然あるでしょうし、けっこう説得的なような気がしてなりません。

 そんなことを考えつつ、
先ほどの場面におけるAさんとBさんの実務対応のあり方を検討してみると、
以下の3つのいずれかなのかな、と現時点では思ってます。

 ①.事業譲渡に関する合意は公開買付け前には一切行わない。
 ②.公開買付け前に事業譲渡に関する合意を行うが、
  法的拘束力のない基本合意にとどめておく。
  特に事業譲渡の価格に関しては公開買付け後に白紙の状態から交渉する。
 ③.公開買付け前に事業譲渡に関する合意を行うが、
  事業譲渡の価格に関しては、複数のフェアネス・オピニオンを取得する。

 気をつけていただきたいのは、
いずれも、法的な観点からみてノー・リスクというわけにはいかない、ということですね。 

 例えば、上記①や②のオプションでも、
公開買付けの後、それに近接した時期に事業譲渡が行われた場合には、
他の応募株主から「出来レースだったのでは?」というクレームがなされ得る、
で、ホントに、口頭でのものを含めて、
AさんとBさんとの間に、拘束力のある合意がなかったと言えますか?、と。

 また、上記③のオプションでも、
そもそも論として、フェアネス・オピニオンの実効性という問題がありますよね。
 特に、その譲渡対象事業が複雑であれば、なおさらですね。
 
 非常に難しい問題ですので、なかなか良い答えが見つからないのですが、
私個人としては、少なくとも現時点では、
ビジネス上も特に問題ないなら上記②のオプションが穏当なのかな、と、
そう思ってます。


●本日のツボはこれでおしまい。
 やっぱM&A関係は難しいですね・・・。


(2008年1月6日記)
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