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●「総会祭り」、継続中。


●「提案したら却って不利?」という前回のツボでも述べたとおり、
ここ数年、株主提案というのはさほど活発ではありませんが、
いつ何時、株主提案がなされるか分かりませんし、
いざ、なされた時に慌てて対応策を考えるようでは困りますね。

 そのようなことを見据えてか、
前回のツボも予想以上のアクセスをいただいていたようです。

 そのことに気を良くしてしまったので(笑)、
本日のツボでは、取締役選任に関する株主提案の取り扱いについて、
その内容確認を中心に少し丁寧に詰めてお話していこうかな、と。


●で、まずは、
剰余金配当に関する株主提案の議論との比較について、
事前に頭に入れておくことが思考整理に有益かと。

 詳しくは前回のツボを見ていただくとして、
剰余金配当に関する株主提案の内容確認のポイントは、

 「提案株主は最低でも会社提案の額は欲しいのでは?」、と。

 なので、
通常は会社提案の額に対する上積み提案(議題追加)として
株主提案がなされているものと考えておけば足りる、と。 

 他方で、
取締役選任に関する株主提案においても、

 「提案株主は最低でも会社提案の取締役は選任したいのでは?」、と、

そのように剰余金配当の場合と同じことが言えるかというと、
それは明らかにおかしいなぁ、と思いますよね。

 剰余金配当の場合、通常はお金を問題にします。
 お金ってのは色がないのですよね。
 その上、一般的には多くもらえるならそっちの方がいい、と。
 だから「最低でもまずは会社提案の額は…」となりやすい。

 他方で、
取締役選任の場合には、
お金ではなく人を問題にしているので、
そういう単純な議論が直ちに妥当しにくい、と。


●では、
取締役選任に関する株主提案の内容確認、
この際のポイントは何になるのか?というと、
ホントに詰めて考えるには、ちょっと長たらしい検討が必要なんですね。
 
 議論を単純化するために、
まずは株主提案と会社提案の内容が固まる時間差を考えずに検討します。

 その際のポイントは、以下のとおり。

 (i)提案人数の大小比較
 (ii)取締役会の支配獲得目的か否か

 この2つをこの順で検討することだと思います。
 ただ、(i)の検討だけで片が付く場面もあります。

 ちなみに、
もちろん、最終的には株主に内容確認するんですよ。
 ただ、
会社としての心づもりとして何を想定すればいいのかの指標の問題。
 後、
株主に内容確認できなかった場合の対応の問題でもあります。


●まず(i)の検討だけで片がつく、比較的簡単な方から行きましょうか。
 それは、株主提案の人数の方が会社提案の人数より多い場合。

 例えば、
会社提案としてA、B、Cの3名の取締役選任が提案される一方で、
株主提案としてX、Y、Z、V、Wの5名の取締役選任が提案された、と。

 この場合ですね、
株主提案の内容としては、
通常は一つに絞られると思います。

 何かというと、

 ①ABCの3名に加えて更にXYXVWの5名を取締役に選任(合計8名)のみ、と。

 つまり、
会社提案に係る議題の下での修正議案の提案ではなく、
新たな議題の追加をしている、と。

 何でこういうことになるかというと、議題の問題ですね。

 会社提案の議題というのは「取締役3名選任の件」となります。
 ここでのポイントは議題に人数まで入ってくること。

 なので、
仮に会社提案に係る「取締役3名選任の件」という一つの議題の下で
修正議案の提案をしているとなるとですね、
ABCの3名ではなくXYZVWの中から3名を選任して、ということになる。
 つまり、
株主提案としてのXYZVW5名のうち3名しか取締役に選任される可能性がない。

 株主としては
敢えてXYZVWという5名を提案しているわけですから、
基本的にはやはり5名全員が選任されることを望んでいる、と、
そのように考えるのが通常ではないかな、と。
 そうであれば、
やはり上記のように議題追加という一つの可能性に絞られるの通常、と。

 ただ、
一応留意すべきは定款の上限人数との問題。
 例えば定款で上限7名とされている場合、
ABCとXYZVWの合計8名をそのまま選任することはできないですよね。
 誰か1名を落選させなければなりませんね。


●で、次はちょっとややこしい。
 株主提案の人数の方が会社提案の人数より少ない場合。

 例えば、
会社提案としてa、b、c、d、eの5名の取締役選任が提案される一方で、
株主提案としてx、y、zの3名の取締役選任が提案された、と。

 この場合、
剰余金の配当の場合と似た感じで、
教科書的に言うと2つの可能性がある。

 ①abcdeの5名に加えて更にxyzの3名を選任(合計8名の選任)
 ②abcdeの5名ではなくxyz3名とabcdeのうち2名の選任(合計5名の選任)

 ここでいう上記②の可能性というのは、
先ほどの株主提案の人数の方が多い場合には出てこなかったものですね。

 で、
この場合は上記(ii)のポイントを検討する、と。

 「株主の目的は取締役会の支配獲得か否か」

 上記の例で、
仮に提案株主が取締役会を支配することにあくまでこだわるようなら
通常は上記②に絞られますね。
 取締役全員の改選期であることを前提に、
上記①の場合であれば、
会社提案に修正提案がぶつけられてないので通常はそのまま通る可能性が高いし、
かつ、株主提案の取締役は合計8名のうちの3名とあくまで少数派。
 上記②の場合であれば、
会社提案に株主の修正提案をぶつける形となっており、
仮に株主の修正提案が全て通るとすれば、
取締役会の過半数を握ることが可能ですね。

 他方で、
上記の例で仮に株主が取締役会の支配獲得までは必ずしもこだわらず、
それよりも、とにかく自分の息のかかった人を取締役会に送り込みたい、と、
そう考えているようであれば上記①の可能性も出てくる。
 後、
上記の例を一部変更して、
例えば株主提案がxy2名の選任を求めるものであったとすれば、
上記②の場合であっても取締役会の過半数を握れない。
 その場合の株主の目的は、
やはり取締役会に自分の息のかかった人を少しでも入れ込みたい、と。

 で、
このように監視機能強化のために自分の息のかかった人を少しでも送り込みたい、と、
その株主の目的により合致しているのは、
上記①と②のどちらかというと上記①の方だと思います。
 だって、
上記①の方が、取締役になれる人の数が増えてるんですもの。
 特に取締役選任の場合には、
会社提案の方が一般的に安心感が高く見えるので賛成票が多く集まりやすい。
 そういう状況の中で、
株主提案が最終的に通る可能性がより高まるのは、
やはり選任枠を広げる上記①の場合ですよね。

 但し、
上記①の議題追加の場合については、前述のとおり、
定款の上限人数との関係での問題がある点に注意。


●後、残ってるのは、
株主提案の人数と会社提案の人数が同じ場合。

 例えば、
会社提案としてA、B、C、D、Eの5名の取締役選任が提案される一方で、
株主提案としてX、Y、Z、V、Wの5名の取締役選任が提案された、と。

 この場合にも、
一応、教科書的には2つの可能性がある。

 ①ABCDEの5名に加えて更にXYZVWの5名を選任(合計10名の選任)
 ②ABCDEの5名ではなくXYZVW5名の選任(合計5名の選任)

 で、
この場合も上記(ii)のポイントを検討しないといけない。

 「提案株主の目的が取締役会の支配獲得か否か」

 先ほど述べた議論からして、結論はわかりますよね。

 仮に取締役会の支配獲得にこだわっているようなら
通常は上記②の方に絞られていく、と。

 他方で、
取締役会の支配獲得にこだわるのではなく、
とにかく、自分の息のかかった人を少しでも送り込みたいということなら、
上記①の可能性も出てくるし、むしろ上記①の方が目的に合致する、と。

 ただ、
これまでと同様に、定款の上限人数との関係には留意が必要ですね。
 この点、
すぐ後で述べるとおり、
提案人数と上限人数が全く一致する場合は特殊なので注意。


●で、
ずっと見てきてわかるように、
上記①のような議題追加提案の場合には、
定款の上限人数との関係が問題となるという点ですね。

 この場合の採決はどうするかというと、
まぁ、色々と議論があって教科書的には複数の方法があるようですが、
各候補者について、それぞれ賛否を投票することができるとした上で、
可決要件を超えた者の中から得票数が多い順に選任していく方法が、
無効票の問題や採決順の問題を考えずに済むという意味で
一番シンプルでおススメですね。

 例えば、定款上限人数7名の場合において、
会社提案としてA、B、C、D、Eの5名の取締役選任が提案される一方で、
株主提案としてX、Y、Z、V、Wの5名の取締役選任が提案された、と。
 これらを議題が2つあるという前提で採決した結果、
A 95% B 90% C 85% D 70% E 75% X 87% Y 80% Z 73% V 65% W 60%。
 この場合は、
得票数の高い順からABXCYEZと当選させることになる、と。

 ちなみに、
上記の例で、定款人数上限が5名の場合においては、
上記①のような議題追加提案と考えるのではなく、
上記②のような修正議案提案と考えて処理するのが一般的(採決方法は一緒)。
 詳細は控えますが、
モリテックス事件で問題となったように、
こちらの方が委任状等の解釈・処理がシンプルかつ合理的になるから等。
 ただ、その場合には、
一般株主にわかるのかな?」という会社のツボで述べたとおり、
色々と株主への説明記載等の問題があると思います。


●さてさて、
以上は、最初の方に申し上げたとおり、
株主提案と会社提案の内容が固まる時間差を無視した検討なのです。

 実際は、
株主提案というのは、
総会の8週間前までに行わないといけなくて、
会社提案の内容が不明な状況の中で行われるのですよね。
 
 そうすると何が起こるかというとですね、
会社提案の提案人数が何人になるかとか、
提案株主には通常わからないわけですよね。

 なので、
提案株主として取締役会の支配獲得を目的としようと言っても、
会社提案の提案人数がわからない以上は、
提案株主としてもなかなか難しい部分がある。

 で、
結果としては、
とにかく最低でも自分の息がかかった人を送り込みたい、と、
そちらを重視する形が多くなるのではないか、と。

 そうすると、
概ね、通常は上記①の追加議題の方が選択されることになる、と。

 同じ状況を、
会社の視点から見てみるとよりわかりやすい。

 株主提案が総会の8週間前までには出てくる以上、
実務上、かなり時間的制約があるとはいえ、一応ですね、
会社提案の内容というのは株主提案の内容を見て調整の余地がある、と。
 
 なので、
会社としては、
事前の票読みの動向にもよりますが、
なるべく提案株主に取締役会の支配獲得をされないような形で、
会社提案の内容を固めることを検討する余地もある、と。
 つまりは、
会社提案の提案人数を株主提案の提案人数よりも多くすることはもちろん、
仮に上記②のような同一議題の下での修正提案の関係になっても、
提案株主側に過半数を握られる余地を最小化する提案人数を考える、と。
 例えば、
株主提案が3名であれば、
会社提案として5名を提案とすると、
上記②のような同一議題(取締役5名選任)の下での修正提案の関係になると、 
理論的には、株主提案3名が通って提案株主側が支配を獲得できる余地がある、と。
 そのようなリスクをできるだけ最小化するために、
会社提案としては例えば7名を提案するとかね。
 
 ただ、
このような会社の対応にも限界がある場合があるわけです。
 言い換えれば、
株主として取締役会の支配獲得を自信を持って目指せる場合がある。
 それは何かというと、
定款に上限人数の定めがある場合。
 特に株主側が上限人数いっぱいで提案してきた場合などは、 
会社としても上記のようなリスク最小化の対応が図れない、と。 
 モリテックス事件は、まさにこの例ですよね。


●さて、
以上のように株主提案と会社提案の内容が固まる時間差があることにも起因して、
実務上、多少なりとも悩ましい問題が生じてきます。
 何かというと、
会社提案と株主提案との間で重複候補者がいる場合ですね。

 例えば、
会社提案としてA、B、C、D、Eの5名の選任が提案される一方で、
株主提案としてX、Eの2名の選任が提案された、と。
   
 この場合、
先ほどの議論のとおり、
上記①のような追加議題の関係になる可能性が高いわけですが、
Eさんが会社提案と株主提案とで重複しているわけですね。
 
 この重複候補者の処理方法としては2つある。

 (a)会社提案に既にEさんが入ってるので、株主提案からはEさんを除外する方法
 (b)会社提案でのEさんと株主提案でのEさんと、それぞれに賛否を問う方法

 ただ、ですね、
まず私のような単純な人間からするとですね、

 「上記(b)の方法って、わかりにくくない?」、と。

 直感的にまずそう思うのですね。
 何で同じ人物について、二回も採決をしないといけないの?、と。

 後、これは直感的な問題だけではない。
 例えば、Eさんについて二回賛否を問うわけですが、
この二回の採決において、同じ株主が矛盾する投票をした場合、
それを無効票とすべきかどうかを考えないといけないですね。
 後、
片方で可決されて片方で否決された場合、
その対応も考えないといけないですね。

 もちろん、色々議論はできますよ。
 会社提案としてのEさんと株主提案としてのEさんは色が違う可能性があるとか、
矛盾票を無効票にしない、片方でも可決すればOKとする等の特別のアレンジをするとか。

 でもね、それって、

 「やっぱりわかりにくくない?」、と。

 仮に招集通知などに説明を加えるとしても、
できるだけ、そのような説明なしに済ませられる方がいいのでは?、と。 

 特に株主総会ってのは、通常、
多くの人数を相手にしなければならないのですよね。
 多くの人数を相手にして動かす場合には、

 「シンプル・イズ・ザ・ベスト!」 

 そうすると、
私のおススメとしては、
やはり上記(a)の方法ですね。
 つまり、
会社提案に既にEさんが入っているので、
株主提案からはEさんを除外する、と。
 但し、
会社提案の説明の中には
Eさんは株主提案としても候補者提案されてたこと及びその提案理由を含めるとともに、
株主提案の説明の中でも、
Xさんのほかに、Eさんが候補者提案されてたこと及びその提案理由を注記する、と。
 後、
株主提案に一括して賛成という委任状については、
少なくとも会社提案のEさんとの関係で賛成と扱う、と。

 もちろん、
株主と合意できるなら、
そのように合意した上で上記(a)の方法をとるのが一番ですよ。
 ここで議論しているのは、
仮に株主と合意できなかった場合に、なおどうするか?ということです。


●後、
総会の場における動議については、
剰余金配当の場合で述べたように、
議題の追加はできないのですよね。

 つまり、
上記②のような会社提案に係る一つの議題の下での
修正議案の提出しかできません。

 なので、 
取締役の選任人数枠を増やすことはできないことに留意。


●本日のツボは、ここまで。

 書いちゃったので、もう遅いけど、
ちょっとマニアック過ぎたかなと反省中。。
  

(2011年4月3日記)
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