上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

●「猿マネ」すると思わずヤケドするかも。


●「株ならいいの?」というM&Aのツボでも述べたとおり、
最近はスクイーズアウト、その中でもキャッシュアウトに関する取引が、
多くのM&Aを通じて曲がりなりにも市民権を得てきましたね。

 本日のツボは、
このキャッシュアウトに関連して、
テクニカルな注意点と実務上の心構えを。


●既にご存知の方も多いかと思いますが、
法制審の会社法見直しに関する議論の中で、
株式併合の際には反対株主に株式買取請求が認められてないことについて、
少なからず問題提起がなされていますよね。

 で、
会社法の改正により、
仮に株式併合について株式買取請求が認められた場合、
一つの可能性としてあり得るのが、
株式併合を「真っ当」なキャッシュアウトの手段として利用するということ。

 もうはるか昔、
経産省から「MBO指針」ってのが経緯はともかく出されましたが、その中で、
キャッシュアウトを行うにあたっては、
反対株主に株式買取請求が認められない手段を使うな、と。
 ここで念頭に置かれてたのは、
MBO指針にも明示的に記載されているとおり、
まさにこの株式併合なんですよね。
 でも、
会社法の改正によって、
株式併合の際にも反対株主に株式買取請求が認められるとすれば、
株式併合をキャッシュアウトの手段として正々堂々と使うことが可能となり得る、と。

 多分ご存知のとおり、現在の実務では、
キャッシュアウトの手段としては、全部取得条項付株式を利用するものが殆ど。
 念のため、簡単に説明しておくと、
定款変更によって上場普通株式に全部取得条項を付けた上で、
その全部取得条項をトリガーする。
 そうすると、
全部取得条項を付された上場普通株式は全て対象会社に取得され、
他方で、そのような全部取得の対価として、
残余財産分配請求権が優先/劣後するA種株式が交付される、と。
 ただ、
そのA種株式と全部取得条項付普通株式の交換比率が1:数万とかにされてるので、
少数株主のそれぞれには、A種株式の1株未満しか割り当てられない、と。
 で、最終的には、端数処理手続を通じて、
少数株主には株式ではなく金銭が渡されることになる、と。
 これでキャッシュアウトの完了。

 以上の手続っては、
M&Aを日常的に取り扱ってる弁護士からすると茶飯事なのですが、
やはり一般の方からすると非常にわかりにくいのですよね。
 で、実は、
少数株主の持株を端数にして金銭化するというのなら、
それは株式併合でもできるし、よっぽどこちらの方がシンプルなのですよね。

 そうすると、
仮に会社法改正で反対株主に株式買取請求が認められるとすると、

 「これからは株式併合の時代だ」、と。
 
 そういう人も出てこなくはないかもしれない(笑)。


●ただね、
結論から言っちゃうと、
仮にそのような会社法改正があったとしても、

 「やはり株式併合よりも全部取得条項付株式の方が断然いい」、と。

 賢明なる本ブログの読者なら既にお気づきのとおり、
私は、複雑なもの、わかりにくいものは基本的に嫌いです(笑)。
 なので、
上記のように小難しい全部取得条項付株式の方を私が勧めるというのは、
ひょっとしたら、ちょっと奇異に映るかもしれませんね。

 何故、このように私が全部取得条項付株式を採るかというと、
こちらの方法だと、継続開示義務が消えるタイミングが早いからです。
 全部取得日の当日に、
キャッシュアウト対象会社において、
全部取得した全部取得条項付普通株式を全て消却することで、
その瞬間にキャッシュアウト対象会社の継続開示義務を消滅させることが可能、と。

 他方で、
株式併合の場合には、そのような処理はできないのですよねぇ。
 たとえキャッシュアウトの結果、株主が一人になったとしても、
まずは当事業年度の末日までじっと待って、
ようやく末日が来たら、その日の株主名簿を持って継続開示義務の免除申請を行う、
それで免除が下りて、ようやくやっと継続開示義務から逃げられる、と。
 つまり、
キャッシュアウトの後においてもなお、
当事業年度の末日までの間に提出期限が来る半報とか臨報とかは出さないとダメ。
 当事業年度に関する有報は早めに免除申請すれば逃げられるけどね。

 何で、こんな違いが出てくるのか。
 言い換えれば、
どうして全部取得条項付株式の場合は、
当事業年度の末日まで待たずとも継続開示義務を直ちに消せるのか?

 これはねぇ、
最近は概ね浸透してきたプラクティスですが、
当初はホントに周囲への説明・説得が大変だったんですね。
 
 まず継続開示義務が消えるとの明文は、金商法上、どこにもない。
 むしろ上場廃止後でも、
一度でもSRSを出した株式(旧上場普通株式はこれに該当)を発行してれば、
継続開示義務は一生負い続けるのが原則、と、
そういう注意がよくなされていましたよね。
 根拠条文は金商法24条1項3号。
 
 ただ、
よくよく考えてみると、
全部取得条項がトリガーされることで、
全部取得条項が付された旧上場普通株式は全て対象会社の手許に集まる、と。
 で、それを全部消却してしまうなら、
もう、この世の中には「一度でもSRSを出した株式」というのは存在しなくなる。
 全部取得の対価として出されて、現在唯一発行されてるA種株式ってのは、
まだ発行されたばかりのもので、過去にSRSなんて出されてないですもんね。
 なので、
金商法の明文にはどこにも書いてないんだけど、
この消却後の状況をよくよく見てみると、
どこにも継続開示義務を根拠づけるモノなんて無いんじゃない?、と。

 これをね、当初は、
金融庁に確認し、関財の担当官にも説明しに行って、
それから相手方弁護士やFA、対象会社の会計士とか、
ホントに色々な方に何度も説明して、ようやく理解していただいたのでした。
 ちなみに、
一番抵抗(?)を受けたのが対象会社の会計士さんからだったような記憶。
 メシの種がなくなるタイミングが早まるせいなのか、
ひょっとしたら、というか確実に恨まれてるのかも…(苦)。 

 で、
それはいいとして、
全部取得条項付株式の場合は、
普通株式とA種株式の取り換えが生じるので上記のような議論ができるのだけど、
株式併合の場合には、単に普通株式そのものを併合するだけでして、
A種株式との取り換えが生じない、要は普通株式は世の中から消えないのですよね。
 なので、
過去にSRSを出した株式が消える(消せる)わけじゃないので、
継続開示義務から逃れるには、金商法の定めに従って免除申請をやらなきゃいかん。
 でも、そのような免除申請を通すためには、
最終事業年度末日の株主名簿上の株主が25名未満じゃないとダメなの。
 そうすると、
キャッシュアウトを行った日からみた最終事業年度(前年度)の末日時点では、
まだ上場会社なんだから株主が25名未満なわけがないのであって、
当事業年度が終わるまで待たないといけないのですね。
 当事業年度が終わって、ようやくその末日時点の株主名簿では、
キャッシュアウト後の極めて少ない数の株主数が表示されるわけですよね。
 その株主名簿を持って初めて免除申請ができる。
 言い換えれば、それまでは継続開示義務は消えないので、
それまでに提出期限が来る半報とか臨報とかがあれば出さないといけない。


●さてさて、
そのようなプラクティスもいつの間にか「常識」になってきたわけですが、
どうも最近ですね、

 「全部取得日に消却したら継続開示義務は消滅」、と。

 どうも、この結論部分だけが一人歩きしてるようなのですよね。
 
 で、何が起こってるかというとですね、
まぁ、特に深く考えずに「A種株式って何となく気持ち悪いから」という理由で、
キャッシュアウトの端数処理手続完了後すぐに、
そのA種株式を普通株式に戻そうとする会社さんがチラホラいるんですよね。

 これはねぇ、

 「絶対やっちゃダメ!」

 もう一度、基本に戻りましょう。

 「どうして全部取得条項付株式の場合に直ちに継続開示義務が消えるのか?」
 
 それは、

 「この世の中から『過去に一度でもSRSを出した株式』を消せるから」

 ここでいう「過去に一度でもSRSを出した株式」というのは、
キャッシュアウトの場面で言えば、全部取得条項を付されることになる上場普通株式。
 
 で、そこでの肝はね、

 「消却後に唯一残るA種株式ってのは上場普通株式とは種類が違うんです」、と。

 特に開示の場面では、
有価証券の種類が違うかどうかというのは、会社法の視点とは異なり、
以下の4つの変数を見て、そのどれか一つでも内容が違うのかどうかで判断される。

 ①剰余金の配当
 ②残余財産の分配、 
 ③株式の買受け
 ④議決権行使可能事項 

 で、A種株式ってのは、
敢えて②の部分を普通株式と違えることで、
「普通株式とは種類が違う」と建付けてるのです。

 なのに、
このA種株式を普通株式にすぐに戻しちゃったりなんかしたら、

 「この世の中には未だ『過去に1度でもSRSを出した株式』が残ってるんじゃない?」、と。

 そう当局から判断される可能性が生じちゃうのですよね。

 なので、
A種株式を普通株式に戻すなんて止めてください、と。

 そもそも、そこでのA種株式ってのは、
あくまで残余財産分配の点についてだけ特殊性があるように建付けてるのだから、
通常のオペレーションを行う限りは、特に普通株式に戻さなくても全く支障ないはず。

 ただ、うん、
どうしても気持ち悪いのか、普通株式に戻したがる会社さんもいらっしゃる。

 そういう時には、

 「まぁ、少なくとも1年程度はそのままにして、ほとぼりが冷めたら…」、と。


●本日のツボは、ここまで。

 私だって、多くの偉大な先人のマネばかりですよ。
 ただ、マネする時ってのは、
その対象がそのように仕上がった理由・理屈を徹底的に詰めるように心がけてます。
 これをしないと単なる「猿マネ」になっちゃいますのでね。
 「やってる」と「やれてる」は違うのですよね。自戒を込めて。


(2011年4月15日記)
関連記事
Secret

TrackBackURL
→http://bookaholiclawyer.blog18.fc2.com/tb.php/67-a608b24f
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。