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●良くも悪くも日本的なお話。


●かつて、
裁判官のコンプラ意識?」という労働のツボで、
「自分のポケットに入れたかどうか?」という、
懲戒解雇の有効性判断に関する伝統的なメルクマールについて、
現代的なコンプライアンスの観点からメスを入れてみました。

 実は、この労働のツボ、
未だに少なからず反響がある人気のツボでして、
多くの方から共感の声もいただいたのですが、
ただ自分で書いてて何なのですが、
あのツボで書いた内容が、
現代の日本企業の実情を全て包含するものかというと、
決してそうではないのですよね。

 あのツボで一つのエピソードとして紹介した例、
「自分のポケットに入れてない」以上は「会社のため」にやったんだ、と、
そうであるにもかかわらず当該従業員を懲戒解雇とするのであれば、
他の従業員の会社に対する忠誠心はガタガタになっちゃう、と、
なので当該従業員に対する懲戒解雇は避けたい、と。
 現実問題としては、
今もそういう会社さんはいらっしゃるし、
それを頭から非難するつもりもありません。

 そんなわけで、本日のツボでは、
「裁判官のコンプラ意識?」のアンチテーゼ的なものではありますが、
「会社のため」に非違行為をした従業員の現実的処遇に関する留意点について。
 

●最初に基本の確認。

 当たり前といえば当たり前ですが、
「会社のため」に非違行為をした従業員について、
敢えて懲戒解雇その他の懲戒処分を回避し、
雇用継続や給与水準を維持するという会社の行為それ自体は、
特に労働法で禁止されているわけではありません。
 就業規則上、
仮に当該行為が懲戒事由に該当するとしても、
会社として懲戒処分を必ずしないといけないわけではない。


●ただね、
「裁判官のコンプラ意識?」でも述べたとおり、
ここ日本においても、十数年の時を経て、
「コンプライアンス(法令順守)」という言葉には、
格段の重みが伴ってきたことは間違いない。

 そういう状況の中で、
特に社会的要請にも反する非違行為を行った従業員を、
「会社のため」だったとはいえ会社内にそのまま留め置くことには、
当然ながら一定の副作用が生じざるを得ないのですよね。

 そのような副作用には様々なモノがあり得ますが、
大きいのは労働法と会社法の側面でのモノ。


●まずは労働法の側面での副作用。

 本来は懲戒処分できるのにしない、つまり、
就業規則上の懲戒事由に該当しているにもかかわらず、
会社として懲戒処分をしない、と。

 これをやっちゃうと何が起きるかというと、

 「そのこと自体が有力な前例となり得る」、と。

 言い換えれば、
将来同様の非違行為が発生した場合であっても、
その前例の存在ゆえに懲戒処分の発動ができなくなる、という意味で、
その前例が将来の懲戒処分の発動に対する制約要因となり得る、と。

 もちろん、
「裁判官のコンプラ意識?」で述べたような現状での裁判所の感覚からすると、
あくまで「会社のため」だったということで現時点で懲戒解雇を避けるというのは、
後世にずっと禍根を残すほどの「前例」までにはならないようにも思いますが、
他方で、少なくとも懲戒解雇未満の懲戒処分を全く行わないことは、
そのような後世にずっと禍根を残す可能性のある「前例」になり得るような。

 次に述べる会社法の側面での副作用も考慮した上で、
「そのような『前例』を作っていいのか?」とまずは自問自答すべき。
 個人的には、
現時点では懲戒解雇はともかくとして、
懲戒解雇未満の処分はやはりやっておくべきではないかな?という感覚。

 ちなみに、
懲戒処分とは別の普通解雇や人事権行使としての降格・降級・配転などについても、
懲戒処分ほどではないにせよ、似たような「前例」の問題がありますね。


●次に会社法の側面での副作用。

 やはり怖いのが、
再度類似の問題が発生した場合の取締役の責任なんですよね。

 そのことに思いを致す場合、
仮に懲戒処分としての降格等を行わないとしても、
通常の人事権行使としての降格・配転その他の処分によって、
少なくとも深く関与をした従業員は従前の職務から外しておくべき。
 例えば、価格カルテルの例で言えば、
深く関与をした従業員は少なくとも営業職から外しておくべきですね。

 後、同様の理由から、
関与が疑われる従業員を会社法の役員に就けることも避けた方が良いかと。
 ある程度年次がいった方については、
「通常なら子会社の役員に」などということもあるかもしれませんが、
それはやはり避けておいた方が良いかなと。


●本日のツボはここまで。

 「裁判官のコンプラ意識?」の内容とかなり打って変った感じですが、
やはり実務は綺麗事だけじゃないわけですから、
ドロ臭く現実を直視することもまた大事かなと思いまして…。
 ちなみに、
他のツボもそうですが、
適宜適時に削除しちゃう場合もありますので悪しからず。


(2011年4月20日記)
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