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●労働契約承継法の根っこに残る問題。


●会社分割の際の労働承継ルール、
これを取り決めるのが労働契約承継法。

 で、
この法律については、
昨年の夏休み前ぐらいでしたか、
IBM事件の最高裁判決が出ましたよね。

 各所で取上げられておりましたが、
まぁ、正直、さほど大騒ぎするほどの判決でもない気がするので、
本日は涙を呑んでスルーすることにしましょう(笑)。
 余裕とリクエストがあれば、そのうち。

 で、
本日のツボで述べたいのは、
もっと根っこの方にある問題。


●さて、
この労働契約承継法、
これは、もう今は昔の2001年4月1日、
会社分割制度を導入する商法改正と同時に施行されたもの。

 で、
その主たる目的の一つは、
会社分割を通じた承継会社による労働者のチェリー・ピッキングの防止。

 その最たる現れが、
労働契約承継法4条と5条ですね。
 例えば、
承継対象事業に主として従事する労働者Aさんについて、
分割会社と承継会社との間で、
承継会社はAさんを引き取らないので分割会社が引き続き面倒見てね、と、
そのように合意された場合であっても、
Aさんから異議が出されちゃった場合には、
結論として承継会社はAさんを引き取らなきゃならん、と。

 これは、
私の記憶が確かであれば、
会社分割制度導入に強い危惧を抱いた労働者側のロビイングの結晶なわけでして、
その内容が固まるまでは随分と労使で揉めたんじゃなかったかな。


●さてさて、
そんな風にですね、
労働契約承継法というのは、
元々、商法時代の会社分割制度とセットで導入されたわけでして、
なので当然と言えば当然ですが、
商法時代の会社分割制度の内容を前提として作られたわけですね。

 ただ、
その後、約5年の月日を経た2006年5月1日、
従前の商法の大部分を書き換えるものとして、
会社法というの名の法律が鳴り物入りで施行されてきた、と。

 で、
これで何が起こったかというと、
特に組織再編について言えば、
会社分割制度の内容が、
随分と大きく変わってしまったわけですね。

 その大きなものの一つは、
見込みでしょ?」というM&Aのツボで述べた、
「債務の履行の見込み」に関する部分。

 ただ、
それ以上に大きかったのは、
やはり会社分割の対象について、
「事業(営業)」という呪縛から解き放ったことですね。

 つまり、
旧商法時代は、
会社分割の対象としては、
全体として「事業(営業)」と呼べるものでないとダメよ、と、
そういう建付けが採られてたわけですが、
会社法の下では、
様々な関係者の努力によって、
必ずしも「事業」でなくても良いよ、と、
「事業を構成する権利義務の一部」でも対象として良いんだよ、と、
そういう自由な感じに変更されたわけですね。

 少し極端かもしれませんが例えばの話として、
親会社が数ある子会社のうち特に小さいの一つを、
株式の形で処分する時にも、
「事業」と呼ぶ余地があるかどうかを問わず、
会社分割の手法を使える余地が出てきた、と。


●で、まぁ、
それ自体はハッピーなことなわけですが、
問題はその先の、労働契約承継法との関係。

 先ほど述べたように、
会社分割制度の方は、
会社法によって「事業」という呪縛から解放されたのですが、
労働契約承継法の方は、
会社法の施行前後において根本的な建付け変更がされたわけではなく、
未だに「事業」という呪縛を引きずっている。
 つまり、
会社分割制度と労働契約承継法との間において、
労働契約承継法の制定当時には見られなった不整合が生じてきた、と。

 このような不整合によって、
具体的に何が生じるか?というと、
余り受けが良くないので表立った場では言い難いのですが、
労働者の「過保護」の可能性なんですねぇ。


●先ほど挙げた例の話で言えば、
その対象子会社の株式ってのは、
「事業」ではないにせよ、
「事業を構成する権利義務の一部」には該当すると言って良さそう、と、
要は会社分割の対象にはできそうで、
会社分割制度上の問題はクリア、と。

 それはいいんだけど、
その場合の労働契約承継法の解釈、
特に「承継対象事業に主として従事する労働者」って誰なのかな?、と。

 この場合、
「承継対象事業」の捉え方としては、
色々な切り口があるのでしょう。
 例えば、
子会社管理事業とか、
親会社が営む数ある事業のうちA事業に含まれるモノとか。
 で、まぁ、
それは事案に応じてどっちでもあり得るし、
どっちでも議論の方向性に大きな影響はなさそうなので、
ここでは前者の子会社管理事業という切り口にしておきましょうか。
 つまり、
対象子会社の株式ってのは、
「子会社管理事業を構成する権利義務の一部」、と。

 で、
そうした場合、
特に「承継対象事業に主として従事」ってのは、
一体どうやって判断するのか?、と。

 これは、
一見すると、
特に悩む必要もない問題のようにも思える。

 「承継対象事業」は子会社管理事業って言ってんだから、
子会社管理事業に「主として従事」するかどうか、
それで判断するしかないんじゃないの?、と。

 でもね、
先ほど述べたような、
会社分割制度と労働契約承継法との間の不整合を前提とすると、
常にその判断だと結論として変にならないのかなぁ?、と。


●例えばね、
対象子会社に関して親会社の従業員がやることってのは、
月一回上がってくるレポートに目を通すとか、
その程度に留まる場合もある。
 つまり、
承継対象権利義務(対象子会社の株式)のレベルで言えば、
月に最大でも数時間程度の従事にすぎない、と。

 でも、
承継対象事業(子会社管理事業)のレベルで言えば、
他の数ある子会社も対象とした子会社管理事業に、
月の大半の時間は従事している、と。

 では、
そういう場合、
承継対象事業レベルだけで見て、
「承継対象事業に主として従事する労働者」に常に該当すると言うべきなのか。
 文言だけからすると、どうもそうなりそう。

 ここでの問題は、
子会社管理事業に従事する労働者が複数いる場合を想定すると、
より一層、明らかになってくるのかな、と。

 例えば、
AさんとBさんの二人が、
子会社管理事業に専属で従事しているとしましょうよ。

 で、
そのうちAさんだけが、
対象子会社のレポートを月1回、最大でも数時間程度見てるだけ、と。
 言い換えれば、
Bさんは対象子会社についてノータッチ、と。

 では、
そういう場合、
承継対象事業レベルだけで見て、
A・B二人とも専属なんだから、
「承継対象事業に主として従事する労働者」に該当すると言うべきなのか?、と。

 ここで押さえるべきは、
該当したらどうなるか?という点なのですね。
 仮に分割会社と承継会社との間では、
A・B二人とも承継会社では引き取らないので分割会社で引き続き面倒見てね、と、
そういう合意がなされていたとしても、
A・Bそれぞれから異議が出されちゃったら、
承継会社はA・B二人とも引き取らないといけないのですよね。

 今問題にしている例で言えば、
数ある子会社のうち特に小さい対象子会社、
その一社の株式が移るだけなんですよ。
 その対象子会社について、
そもそもBはノータッチ、Aはタッチしてるけど月に最大でも数時間程度、
でも異議が出たら二人とも引き取らないといけなくなる、と。

 うん、
やっぱりコレって変じゃないのかな?
 明らかにその二人は、
承継会社にとって余剰人員になりそうだしね。

 実務上は、
このような問題が生じた場合、
当事者の顔等を見つつ落とし所を探ったりする場合もあるようですが、
まぁ、いい加減、法改正でどうにかして欲しいなぁ、というのが正直なトコロ。

 ただ、
元々が労使間で相当に揉めた末に出来上がった法律だったような記憶なので、
今から建付けを大きく変更するってのは難しいのかもしれませんねぇ。


●ちなみに、
本日取り上げた例は、
あくまでも分かりやすい一つの例として挙げたのであって、
そのような取引を会社分割でやる実益はあるのか?、とか、
そういう議論は本質から外れてきます。

 ここでの問題の本質は、
承継対象権利義務レベルで見た場合には極めて薄い関与なのに、
承継対象事業レベルで見た場合には濃い関与になる、と、
そのような不整合について、
「承継対象事業に主として従事」の解釈の際に、
どのように考慮していったら良いのかな?、と、
そういうトコロにあるわけでして、
承継対象事業と承継対象権利義務との間の乖離が大きくなればなるほど生じやすく、
実務上は意外に結構、考えさせられる問題なのですよね。

 そのような問題を回避したければ会社分割を使うな、と、
そういうことになっちゃうのであれば、
会社法の立法の際に関係者が頑張って「事業」の呪縛から解放した意味が、
ちょっと減殺されてしまいますよねぇ。


●本日のツボは、ここまで。

 表立った場で「法改正が必要じゃないの?」とか言っちゃうと、
立法担当官の不興を買うという噂を小耳に挿みました(爆)。
 マニアックなブログの場でなら良いのですよねぇ?


(2011年4月27日記)
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