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●一部「悪法」と名高い「新・売出し規制」について一言二言。


●昨年(2010年)の4月1日、
既発行有価証券の売付け勧誘に関する開示規制、
いわゆる「売出し規制」が全面的に改正されましたね。

 従前、
「売出し」っていうと、
キャピマ(Capital Market)を扱う人間だけが知ってりゃ良い、と、
そんな風潮が一部にあったようにも思いますが、
この「新・売出し規制」によって、
M&Aにもかなり大きな影響があったわけですね。

 そのようなM&Aへの影響のうち、
特に評判が悪いのが公開買付(TOB)応募契約に対するモノ。

 で、
本日のツボは、
そのような「新・売出し規制」の悪法部分について一言二言。


●まず、
改正の概要だけ説明しときます。

 従前の売出し規制だとね、
均一条件で50名以上に対して、
既発行(not新発)の有価証券に関する売付け勧誘を行うと、
「売出し」に該当しますよ、と。
 その場合、
原則として有価証券届出書(SRS)をはじめとした開示書類を出さないとね、と。
 
 ここでのポイントは、
売付け勧誘の対象となる有価証券について、
有価証券報告書(有報)の提出原因がないかどうか、
(例えば上場されてないかどうか)
そういうことは一切関係なかったのね。

 たとえ上場株式であっても、
50名未満に対する売付け勧誘にすぎないなら、
(均一条件でないなら50名以上でも)
「売出し」に該当することは無かったのね。

 なので、
従前は自己株処分が「売出し」と整理されてたこともあって、
自己株を必要数保有している会社であれば、
株式の新発でなく自己株処分という形で第三者割当をすれば、
売出し規制ひいてはSRSを容易に回避することも可能だった、と。 
 そういうキャピマ的裏技があったわけね。

 しかしながら、
今回の改正によって、
「売出し」の定義からは、
均一性要件(「均一条件」)と人数要件(「50名以上」)、
この二つが見事にアッサリと外されちゃったのね。

 もちろん、
50名未満の場合を全てアウトにしたわけじゃないけど、
新発の場合の「募集規制」における「私募」と同様に、
「私売出し」の要件を満たさないとアウトという形に。
 で、
この「私売出し」に該当するには、「私募」と同様に、
対象有価証券について有報の提出原因がないことが要件になってる。

 つまり、
何が言いたいかというと、
例えば上場株式であれば、
「私売出し」に該当する可能性はゼロ。

 そうすると、
既発行上場株式の売付け勧誘の場合、
たとえ勧誘相手が一人だったとしても、
一定の除外取引類型に該当しない限り、
「売出し」に該当しちゃう。
 なので、 
売出し規制の下で、
一定の開示書類の作成・提出・交付が原則必要になる、と。


●このような改正については、
新発の場合の「募集規制」との間で可及的に平仄を合わせた、と、
そういう理論的な説明もできるのでしょう。
 まぁ、
確かに理論でいうと、
改正後の方が綺麗なのかもね。

 ただ、
立法の際の詰めが甘かったのか、
上記のように「売出し」の定義を、
綺麗さ重視でか包括的なモノに変えた一方で、
除外取引類型などが網羅的に作り込まれてないため、
特に実務で問題になっちゃってるのが、
TOB応募契約に対する影響なんですね。

 例えば売主が対象会社の主要株主である場合、
買主が対象会社と無関係とかであれば、
TOB応募契約の締結が「売出し」にあたっちゃうかも、と。
 

●一応、
売主買主の双方が上場会社とかであれば、
ブロックトレードの除外取引類型も使える余地はありそう。

 でも、
このブロックトレードの除外取引類型には、
市場価格を基礎にして取引状況を勘案した適正価格で!っていう、
何だか良く分からん価格要件が付いてるのね。

 で、
TOBってさ、
市場価格にプレミアムを上乗せとかするじゃない。
 そうすると、
この価格要件を満たすことになるのかね?、とか。
 満たす場合があるとして、
それって何%までだったら良いの?、と。


●もちろん、
たとえ除外取引類型に該当しないとしても、
そもそも「売出し」に該当するためには、
「勧誘」の存在が必要になってくる。
 じゃぁ、
「『勧誘』が無い!」と言って抜けるのか?、と。

 でもさぁ、
ちょっと考えても見てよ。
 何を以って「勧誘」に当たるというのか?、
これを実務レベルまで落とし込んで議論するだけで
たぶん本一冊ぐらい書けちゃうんじゃないかなぁ。
 それぐらい難しい問題なのよ。
 
 例えば、
TOB応募契約を締結したら即アウトなのか、
アウトで無いとしたら売主が具体的に何をどこまでしたらアウトなのか、
ビッドかけたら常にアウトか、そうでないなら何がキーになるのか、
こういう点をキチンと詰めてかないといけないのよね。


●でね、
以上の問題の検討、
これがクリティカルに必要なのは、
特にTOB応募契約の売主さんなのよね。

 「売出し」に該当すると言っても、
上場株式については既に有報で開示済みだから、
SRSは不要で残るは有価証券通知書の提出と目論見書の作成・交付。
 
 このうち、
対象会社が有価証券通知書の提出を怠っても、
余り大したことない刑事罰だけなんですよね。

 他方で、
売主が目論見書の交付義務を怠っちゃうと、
アノ課徴金がかかってくるんですよぉ。
 アノ自動発動のこわ~い奴ね。

 つまり、
この問題でミスった時に、
一番刺されやすいのは売主さん。

 でもね、
TOB応募契約の場合の売主さんって、
M&Aに馴れた弁護士が付いて無いことも結構ある。
 加えて、
TOB応募契約締結の翌営業日には、
むしろ買主側から売主を含めた対象会社の株主に向けて、
TOB届出書などの分厚い開示書類が出される予定である中、
売主からも重複するような開示書類を別途出さないといけないなんて、
「何か変じゃない?」っていう感覚の方が常識的のような…。
 このような常識的な感覚との齟齬があるため、
そもそも問題に気づかずに通り過ぎてしまう売主が出てくる可能性も…。


●でさぁ、
更によく考えてみると、
上で挙げたような「勧誘」とかの問題ってね、
こんなの立法する時に事前に考えといてよ!って感じじゃない?

 だけど、
立法過程では、
上記問題の検討って行われてなかったみたいなんだけど…。

 現に、
TOBに関する金融庁のQ&Aにおいてすら、
上記問題に対する見解が未だに明確化されないままの状態が続いてるし、
そもそも金融庁の見解自体も揺らいでたような…。
 まぁ、
あのQ&Aで何か書かれたとしても、
実務上あの文字面は余り意味無いことも結構あるので、
ホントにどこまで依拠できるんか?っていう問題が、
別途また出てきちゃうだけだったりするんですけどねぇ…。

 神様じゃないんだから、
全ての問題は見通せません!って、
そういうのも分からんではないけど、
それならそれで「お約束違反じゃないかな?」という諸々のツボで書いたとおり、
ちゃんと悪法の修正もスピードアップしてもらわないと…。


●本日のツボはここまで。

 立法ってのは、
明確な見通しが立たない限り、
謙抑的な姿勢でやって欲しいなぁ、と。
 強いサンクションを伴わせるなら尚更。
 どうもパブコメの実施が免罪符と勘違いされてないか懸念あり。


(2011年7月11日記)
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