上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

●契約承継条項の問題についてサラッと一言。


●雑誌の論稿でもそうなのですが、
前回の「何が常識?」というツボのように、
契約条項の作り込み方のツボを解説すると、
読者の方からの受けが非常に良いのですよね。

 ということで、
それに気を良くしちゃったので(笑)、
本日のツボでは時折見かける契約承継条項の問題についてサラッと一言。


●まずは簡単なトコロから。

 業務委託契約において、
受託者による第三者に対する再委託の可能性を認めるとき、
そのような再委託に伴うリスクに対応するため、
皆さんはどのような条項を入れますかね?

 通常は、
再委託の可能性を認める代わりに、
当初の受託者が再受託者である第三者をして、
原委託に関する業務委託契約の内容を遵守させる、
仮に再受託者が契約違反したら受託者と再受託者は連座で責任、と、
そんな感じの条項を入れますよね。


●で、
本題はここから。
 
 上で述べた条項ってのは、
おそらく法務に関わる人の間でなら、
ほぼ常識に近いのかなぁ、と思われますね。

 だけど、
その条項の背景にある発想を、
ちゃんと押さえられているかどうか。

 それが良く分かるのが、
合弁契約における契約承継条項なんですよね。


●合弁契約、
まぁ色々な作り込み方がありますが、
典型的なモジュール条項の一つが、
株式譲渡制限条項なんですよね。

 要は、
合弁会社の発行する株式については、
相手方の同意がない限り、
第三者に譲渡してはいけない、と。
 
 ただ、
この株式譲渡制限については、
例えば先買権(Right of First Refusal)を相手方に付与する場合はOKとか、
色々と例外が建て付けられているわけですが、
その一つがグループ会社に対する譲渡。
 つまり、
合弁契約の当事者が自らのグループ会社に対して譲渡する場合は、
株式譲渡制限はかかってこない、と。

 もちろん、
このようなグループ会社に対する譲渡の例外を認めること、
それ自体がいけないと言ってるわけじゃないのですよ。
 だけど、
当該譲渡に伴うリスクに対処する条項を入れ込まなきゃね、と。

 その際に、
よく見かける条項が、
本日のツボのお題である契約承継条項なんですよね。
 つまり、
ある当事者がそのグループ会社に対して合弁会社の株式を譲渡した場合は、
当該当事者が有する合弁契約上の地位を当該グループ会社に承継させよ、と。
 
 
●さてさて、
このような契約承継条項、
一体何が問題なのか、分かりますかね?

 まぁ、
正直なところ、
このような条項が入ってる契約ドラフトって、
ホントに結構たくさん見てきてるので、
これについて特に問題視してない実務家も少なくないみたい。

 だけどさ、
考えても見てよ。

 ある合弁契約の当事者Aが、
自分の保有する合弁会社の株式を、
そのグループ会社の一つであるXに対して譲渡したとするよね。
 そうすると、
さっきの条項によれば、
Xが合弁契約上のAの地位を承継することになるわけ。

 この状況だけを見ると、
何か別に問題なさそうにも見えるかもしれないけど、
そのXってグループ会社の財務状態が余り良くなかったらどうするの?
 差押えとかでX保有の合弁会社株式が強制的に動く可能性もあるし、
合弁契約上の制裁条項の実効性が殺がれる可能性だってあるよね。
 更に言うと、
この場合ってね、
Aは更にXの株式を第三者に譲渡することだってできるのよ。
 これって、
実質的に株式譲渡制限条項がザルってことだよね。
 つまり、
①合弁会社株式のグループ会社への譲渡、
②グループ会社株式の第三者への譲渡、
この二段階の取引で株式譲渡制限条項を容易に潜脱可能だよね。


●何で、
こんな問題大アリの契約承継条項を、
サラッと受けてしまうのか。

 多分、
どっかで見たことあるというだけで、
思考停止してるからだと思うんだよね。

 翻って、 
冒頭で紹介した、
業務委託契約における再委託リスクへの対処条項。
 この背景には、
契約上の許容条件に従って第三者に再委託したからと言って、
それだけで当初の受託者が責任から解放されるってのは、
やはりテンでおかしいでしょ!という発想がある。
 
 これを煎じつめて言うと、
一度、契約当事者となって契約上の義務を負担した者を、
契約上許容されている或る行為があったからと言って、
それだけで簡単に当該義務から逃がしちゃダメなのでは?、と。
 そんなことをしたら、
元々の契約を締結する際の前提が大きく動いてしまうのではないか?、と。
 
 そういう発想を理解していれば、
さっきの合弁契約上の契約承継条項に対して、
少なからず違和感を覚えてくるはずなんだよね。
 つまり、
グループ会社Xに譲渡したというだけで、
Aをホントに合弁契約上の義務から解放させちゃって良いのか?、と。
 むしろ、
Aに対して「Xをして合弁契約上のAの義務を遵守させる」、と、
そういう義務をAに課す条項にしないといけないのではないか、と。


●本日のツボはここまで。

 「実際にトラブルになる可能性は低いんだから、
  契約条項の作り込みは程々で良いんじゃないか」、と。

 したり顔でそう言うのは簡単ですが、
実際に修羅場になった時には相当後悔すると思いますよ。
 つい最近、
トラブルになった合弁契約を見せてもらった時も、
取締役選任条項の文言に一見気づき難いけど致命的なミスがあったり…、と。
 普段は、
それでも問題なかったのかもしれないけどね。


(2011年8月8日記)
関連記事
Secret

TrackBackURL
→http://bookaholiclawyer.blog18.fc2.com/tb.php/94-17ade025
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。