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●合弁契約における拒否権条項の作り込みについて。


●今年(2011年)も、
早々にお盆の季節が終わってしまいました…。

 ということで(?)、
反応がかなり良いことに気を良くしてるので、
本日のツボも契約のツボについて一言二言。
 お題は、
合弁契約(株主間契約)における拒否権条項の作り込み。


●さて、
そもそも合弁契約ってのは、
少数株主のためにこそあると言って過言ではないわけですが、
そのプロテクションのために最も大事なものの一つが、
本日のテーマである拒否権条項なんですよね。

 この拒否権条項、
よく契約交渉で揉めるのは、
何を拒否権事項として盛り込むのか?ということ。

 多数株主からしてみれば、
なるべく少数株主の拒否権事項を少なくして、
経営の自由度を確保しておきたい、と。
 他方で、
少数株主からしてみれば、
広く拒否権事項にしておかないと、
怖くてマイノリティ出資をしてらんない、と。
 
 で、まぁ、 
拒否権事項に何を盛り込むか?、と、
それはもちろん大事なんですけど、
最終的にはビジネスの判断で決まるトコロも大。
 なので、
そこを契約書の作り込みとしてお話できなくもないけど、
あんまり面白くは無いのかも。

 せっかくマニアックな当ブログでお話するのだから、
もっとテクニカルな作り込みのトコロをお話しようかな、と。

 でさ、
拒否権条項で時折見かけるのが以下のようなセット条項例ね。

 条項例①:株主総会で別紙1の事項を決議する場合は全会一致を決議要件とする。
 条項例②:取締役会で別紙2の事項を決議する場合は全会一致を決議要件とする。

 これ、
何が問題なのか分かるかな?
 
 本日お話したいのは、
このような条項例の問題点。


●さてと、
まず条項例①の方から行こうかな。
 
 条項例①は条項例②よりまだ少しカワイイ。

 まずさぁ、
「全会一致」って何よ?
 これって、
株主全員っていう意味?それとも出席株主全員っていう意味?
 この時点で、
既にもう紛れが生じちゃってるよね。
 特に少数株主からすれば、
このような点に紛れが生じるのは致命的ですらある。
 「株主全員の同意」ってちゃんと書こうよ。

 それから、
条項例①ってのは、
単に決議要件しか定めてないのよね。
 例えば、
株主総会で株主全員の同意により決議が成立してないのに、
法律上の決議要件(例えば過半数とか)は満たしたということで、
合弁会社の役職員が当該決議に係る業務執行を進めちゃった場合、
これってどうなるのかな?、と。
 全会一致事項が定款に書き込まれてないなら、
単に契約上の義務違反が生じるだけという説明がよくあって、
会社法違反の効果などが生じないのはその通りだと思うけど、
更に進んで考えて素直に文言を読んだ時に、
契約当事者たる株主の義務違反すら直ちに生じない危険はないのか?、と。
 だって、
条項例①って単に決議要件しか定めていないのよ。
 単に決議要件だけ定めるのでは、
契約当事者たる株主の義務を定める規定として不十分ではないの?
 もっと言えば、
その決議要件を満たさない事項が合弁会社の役職員によって進められたとして、
そのような事態が契約当事者たる株主の義務違反につながるには、
さらに懸け橋となるロジックを間に挿む必要があるはずで、
その点を事前に明確に固めておかないと実務上ワークしないんじゃないの?、と。
 例えば、
別紙1の事項について株主全員の同意が得られない場合、
契約当事者は対象会社及び自らの指名/派遣する役職員をして、
当該事項を行わせてはならない、とかね、
そんな感じでキチンと書き込んであげないと、
契約当事者たる株主の義務違反が生じることを確保できてないんだと思うのよね。

 以上の点ってさ、
ちゃんと説明されれば、
何か当たり前のように聞こえるし、
どこかで見たことある規定だなと思うかもしれないけど、
条項例①のみを見せられた場合に、
特に違和感を感じないまま受けてしまっている例も散見されるのよね。


●次、
条項例②の方。

 「全会一致」という文言の問題や、
契約当事者の義務を定める規定として不十分という問題は、
条項例①と同じで共通するので繰り返しはパス。

 問題はこの先。
 条項例①との違いは、
株主総会と取締役会の違いから生まれる。

 株主総会ってのは、
株主が自ら出席して議決権行使する場なのよね。
 で、
株主ってのは有限責任。
 特に会社に対して善管注意義務を負担することも無いし、
たとえ決議事項に特別利害関係を有してたとしても、
よっぽどなことが無い限り議決権行使を制約されることはない。

 他方で、
取締役会というのは、
株主総会で選任された取締役が出席して決議に参加する場。
 で、
取締役というのは、
会社に対して善管注意義務を負担してるのよね。
 合弁会社の場合、
取締役というのは特定株主の利益代表者として、
自分を指名した株主の利益を守る役割が期待されているのが通常なんだけど、
会社法上は自分を指名した株主に対してだけ義務を負うという建付けは難しい。
 もちろん、
合弁会社を契約当事者にしたりなどの工夫をすることはあるんだけど、
それがどこまで会社法上ワークするのかはようわからん。

 で、そうだとするとね、
取締役全員の同意がなきゃ通らないということで、
もちろん、それは無いよりマシなんだけどさ。
 だけど、
トラブルが起こった時に何が生じるかというと、

 「この事項を通さないと会社に損害が生じるので代表訴訟するぞ!」、と。

 そんな脅し文句の下で、
取締役の多数派工作が始まったりする場合もあるわけさ。

 もちろん、
合弁会社の取締役ってのは、
基本は自分を指名した株主の意向に従おうとするんだけどさ、
でも我が身がやっぱり一番カワイイわけで、
代表訴訟で自分個人の責任が問われる可能性を脅されるとなると、
途端に弱気になったりして相手に造反する人が出て来ることも実際ある。


●でね、
このような多数派工作合戦ってさ、
もちろん実務的に対応策もないではないんだけど、
これに対応するだけ、そもそも面倒臭いでしょ?

 だったらさぁ、
そもそもやめようよ、
上で述べようなセット条項例での建付けをね。

 そこでの問題の根幹は、
拒否権事項を株主総会決議事項と取締役会決議事項の二つに分けた上で、 
それぞれの場において当該事項を決議する要件を加重するという、
その建付け自体にあるんだから。

 では、
具体的にどうすれば良いか?というと、
合弁会社が拒否権事項を行うには両契約当事者の同意が必要、と、
同意なき拒否権事項を合弁会社及び自らの指名・派遣に係る役職員をして行わせない、と、
そういう株主の同意権という建付けにしちゃえば良いのよ。

 これであれば、
どの事項が株主総会の権限でどれが取締役会の権限かとか、
そんな無用な考慮も不要になるでしょ?
 
 少し考えれば分かることなんだけど、
多数派株主から上で述べようなセット条項を提案されて、
その枠組みについては所与の前提として思考停止しちゃった例も無いでは無いので、
老婆心ながら指摘する次第なのです。


●本日のツボはここまで。

 何で細かい文言にこだわるのか?
 それは、
その細かな点を丁寧に作り込むことで、
後のトラブルを可及的にスムーズに解決できる余地があるから。
 実際にトラブルになった事例を数多く見ていないと、
「くだらないなぁ~」で終わってしまうと思うけどね。

 もちろん、
トラブルってのは、
契約に書いてあるとおりには終わらないことも多いんですよ。
 そんなことは重々承知だけど、それでもなお、
契約に書いてあることが交渉上の重要なレバレッジになり得るってことも、
どうぞ忘れないようにしてもらいたいなぁ、と。


(2011年8月22日記)
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